CINEMA STUDIO28

2013-04-21

La maman et la putain ... encore!

 
 
アンスティテュでの「ママと娼婦」上映、周りで何人か行けた人がいるようで羨ましい。自分でも所有してるのを忘れてたけど、本棚を見たら貴重な日本語でのユスターシュ本を持ってた。2001年、エスクァイア・マガジン・ジャパンから出版からされた本。今は亡き出版社だし、この本も絶版であるからして、主演3人の貴重な「ママと娼婦」評をここにシェアしても・・いいはず。
 
 
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ジャン・ユスターシュが「サンタクロースの眼は青い」に出てくれと言った時、僕は同時に、ジャン=リュック・ゴダールの「男性・女性」に出ていました。その後、彼は、僕を(そして自分を)念頭において「ママと娼婦」を書きました。一語一語、句読点たりともおろそかにしない、とても念入りに書き上げられた台本です。
 
このすばらしい、僕には映画史上最も美しい台本のひとつに思えた台本を、三ヶ月で丸暗記させられました。その後、撮影中に、彼はこの台詞を即興だと思わせようとしました。撮影現場で、俳優はいわゆる「恩寵に浴している状態」にありました。類まれな何かを撮っているんだと感じていました。
 
トリュフォーやゴダールと仕事をする時と同じように、天才の仕事に参加していると思えました。ジャンは僕に生涯最大の役のひとつを与えてくれました。この一発撮りの文無しの、「カイエ」(カイエ・デュ・シネマ)の仲間の資金援助を受けた映画でです。ジャンの映画のおかげで僕は今でも生き延び、仕事を続けることができているんです。
 
トリュフォーは僕の父、ゴダールは僕の叔父、ユスターシュは僕の兄です。
 
ジャン=ピエール・レオー(アレクサンドル役)
 
 
 
 
ユスターシュの才能がなければ、「ママと娼婦」は、若い男が二人の女のあいだをわたり歩くという、ありふれた救い難さの物語になっていたでしょう。彼が私たちに強いた、ときには耐え難いその緊張のなかで、私たちは、自分たちが何か比類ないものに関わっているんだと悟りました。
 
ジャンは、何よりも男女の関係がほしいんだ、それが政治と社会の本質なんだと繰り返し言いました。
 
来るべき世代が「ママと娼婦」に興味をもつだろうと、そして、もっと月並みな人たちも、この映画を70年代の記録とみなすだろうと信じています。私が一番好きなものはどれもそうですが、ジャンは、儲けが大きな比重を占め始める時代の一瞬の輝きです。
 
ベルナデット・ラフォン(マリー役)
 
 
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ジャン・ユスターシュはフランスの第七芸術(映画)における一瞬の輝きでした。この独学者は、何にも頼らず、ヌーベル・ヴァーグのほとんどの監督のような有産階級の息子でもなく(それでも彼はダンディでした)、一本の比類のない、電撃的な映画を監督しました。私にとって「ママと娼婦」は、ムルナウの「サンライズ」と同格です。私は彼と、「ママと娼婦」以前に仕事をする機会がありました。
 
「ママと娼婦」は即興で作られた映画では決してありません。台詞や独白は必ず細かく書かれ、念入りに学習されていました。彼は実に手早く撮影しました。というのも、映像がすでに頭に入っていたからです。私たちは、撮影中、奇跡的で重要な何かが起きていると感じていました。とはいえ、特に珍しいことではありません。ごくあたりまえのことにすぎません。
 
俳優に対する彼の演技指導は音楽的なものでした。たとえば、私は、私の役のモデルになった女性の声を聞かされました。さらに「牝犬」や「ボヴァリー夫人」でジャン・ルノワールが演技指導した女優たちを参照させられました。
 
「ママと娼婦」はサイコドラマ(虚構の役になりきる精神療法的な心理劇)でもシネマ・ヴェリテ(ありのままの人物を見せる映画)でもありません。この映画には自然な優美さと映画のモラルがあります。この映画の台詞は私にとって、ラシーヌの台詞であると同時にセリーヌの台詞でもあるんです。
 
フランソワーズ・ルブラン(ヴェロニカ役)
 
 
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長い間見直していないこの映画を、記憶の中で反芻してみると、ベルナデット・ラフォンのコメントが最もしっくりくる。「ジャンは、何よりも男女の関係がほしいんだ、それが政治と社会の本質なんだと繰り返し言いました。」
 
 
ユスターシュの私生活もふんだんに盛り込まれているらしいこの映画に登場する女性にはそれぞれ実在のモデルがおり、衣装係として参加していた女性は、ラッシュを観て彼女自身のあまりの描かれ方(「ママ」のモデルになった女性らしい)にショックを受け自殺、「ママと娼婦」は亡くなった彼女に捧げられている。