CINEMA STUDIO28

2014-01-21

Come and get it / Die austernprinzessin

 
 
大晦日、シネマヴェーラで観た映画。「大自然の凱歌」、1936年アメリカ。ウィリアム・ワイラー、ハワード・ホークスが共同監督。前半をホークス、後半をワイラーが撮るという変わった作られ方をしているらしい。
 
 
冒頭の何分か、木を伐採して川に流すダイナミックなシーンがあり、なるほどこのタイトルだもの、自然の中で暮らす人々の物語なのね・・って筋書きを知らずにのほほんと眺めてたら違った。何なのですかこの邦題は・・?
 
 
この ↑ ポスターど真ん中にいる男が主役なのだが、粘着質の荒くれ者というかなり苦手なタイプ。ロッタという女に恋をするも、別の女との結婚が決まりかけていたため泣く泣くロッタを友人に譲ったものの、何十年かぶりに友人に再会しロッタは亡くなったと知らされ、生き写しのような美しい娘が男の人生に現れる。父と娘のような年齢差で妻も子もいる身なのに、男はこの娘への執着を隠そうともせず・・・という展開で、最後の最後、美しい娘は実の息子と駆け落ちし、残された男は冒頭と同じ場所で鐘を半泣きで力いっぱい鳴らすのだった。って、母との関係なぞ知るはずもない娘からすれば不気味ですらある男の振る舞いを、まるで男のロマン!泣かせるじゃないか!ってちやほや描くストーリー、さすがワイラー&ホークスだもの、映画としてつまらなくはなかったけど、男があまりに迷惑なセンチメンタル野郎すぎて鼻白んだ。泣き笑いで鐘鳴らすおっさんより、伐採して川に流すみたいな、おおおおお!さすが大自然の凱歌であるのう!って圧倒される場面ばかり100分ほど観たかったよよよよ・・・
 
 
 
 
気をとりなおして。2013年、映画納めと決めてたのはエルンスト・ルビッチ1919年の作品「牡蠣の女王」。ルビッチと牡蠣、大好物が2つ、奇跡の融合。2012年の映画納めもルビッチ「男になったら」だった。できれば毎年ルビッチで映画納めするような幸せな映画生活を送りたいものです。主演女優も2年連続オッシ・オスヴァルダ。
 
 
牡蠣で富豪になった社長の令嬢オッシが、友達が貴族と結婚したのが悔しくて、きいいい!私も貴族と結婚するんだー!と奮闘するコメディ。オッシ嬢、「男になったら」でも思ったのだけど、楚々とした女優かヴァンプ女優かどっちかしかいなさそうなこの時代の映画群であまり登場しないような、表情も動きも自由すぎる、人間と動物の中間あたりの位置にある面白い生命体。怒るときは物投げて野獣みたいに暴れる。ひとたび恋に落ちたら、恥じらいもなく気持ちの交歓なぞしゃらくさいとすっとばし、すぐに肉体接触に持ち込むあたり、100年近く前の嫁入り前の女性と思えない肉食っぷりは外見から意表を突かれる唐突なセクシーさ。ルビッチの画面はあいかわらずお洒落!で、いつも楽しみな衣裳(男性のやたら高い襟のシャツが気になった。あれは10年代の上流階級の流行?)から、オッシの住む豪華な家の内装、ずらりと並びオッシをせめて女らしく整えようと奮闘する召使たちの整列っぷりに至るまでどの瞬間も完璧だった。猛獣女の扱いも見事なルビッチ、きっと女性にモテたんだろうな・・。
 
 
ちなみに牡蠣はまったく映画に登場しない。タイトルから想像できない中身の映画2本で2013年を締めた。