CINEMA STUDIO28

2015-03-17

「順応主義者たちの混乱」

 
 
 
京都で聴いたのに、記憶から抜け落ちているエドワード・ヤンのQ&Aについて、誰か丁寧な方が記録してないかな・・と検索してみたけど、見つからない。94年、インターネットが普及する前の話だものね・・・。
 
 
しかし、エドワード・ヤンが京都にいたあの時にあったと思われるインタビューの書き起こしがあった。
 
 
 
 
 
 
このインタビュー記事のタイトル「順応主義者たちの混乱」は、「獨立時代 」 の英題が「A Confucian Confusion 」直訳すると儒者の混乱であることにちなんでのことだろう。読んでいると、父親が儒者、母親がクリスチャン、上海で生まれ台湾で育ってアメリカに渡る、異なる価値観の狭間を生きることが常態の人生で、エドワード・ヤンの映画が台北を描きながらも世界のどこにも通底する普遍をはらんでいるのは生まれ育ちゆえなのか、と思う。
 
 
インタビューは英語で行われたそうで、2007年、東京国際映画祭で追悼上映の際、主演の呉念真 (ヤンヤンの父親を演じた俳優)が来日し、撮影の思い出を語ったとき、エドワード・ヤンの脚本はまず英語で書かれており、台湾の國語に置き換える時、呉念真が手伝って表現がスムーズかどうか確認した、と話していたことも思い出した。私のエドワード・ヤンへの興味には、2つ以上の言語を用いて生きる人への興味も多少は含まれているのかもしれない。
 
 
「獨立時代 」(エドワード・ヤンの恋愛時代)を1月にDVDで見直したので、まだ身体に残像がある状態でこのインタビューを読むと、たしかにあのラストシーンに至るまでの過程は、エドワード・ヤンが引用する「浜辺の砂がどんな感じだったか言わないで、わたしが自分で歩くから」 というジッドの言葉に裏打ちされているな、と解説してもらった気分になった。
 
 
このインタビュー、これまで何度も検索しては読み返してるのだけど、今回、!!!と思ったのは、インタビュアーが加藤幹郎さんだったこと。京都だもの、この方が出てくるのは当然ということか。「映画館と観客の文化史」が映画的興味を満たしに満たしてくれて、memorandomの本のコーナーで紹介した、あの本の著者。エドワード・ヤン×加藤幹郎さんのこのインタビュー、盆と正月がいっぺんに的、好きな監督の映画に好きな俳優が主演する的、私にとってどちらもアイドル(?!)。の、おいしいキャスティング!