CINEMA STUDIO28

2015-03-10

Chinatown

 
 
2月に観た映画で、記録してなかったもの。六本木ヒルズで。午前10時の映画祭で、ロマン・ポランスキー「チャイナタウン」を観た。74年の映画。30年代のLAを舞台に水道利権に絡む殺人事件にジャック・ニコルソン演じる私立探偵が巻き込まれるサスペンス。DVDでしか観てなくて、小さな画面だと入り組んだ話の筋を途中で見失いがちだったから、やっぱりスクリーンは助かるなぁ。ごくまれに予想もつかない真実にどんでん返しで辿り着くようなサスペンスに出会うと、よくできてるな…と感心はするけど、真実とは何?真犯人は誰?を追うことにたいして興味がない私が期待するのは、事件を生むような不穏な空気に浸り、謎めいた登場人物たちに出会うこと。
 
 
マイ・ベスト・ジャック・ニコルソンは「ファイブ・イージー・ピーセス」のつもりだったけど、スクリーンで隅々までディティールを観ると、断然「チャイナタウン」かも!と思えてくる。30年代ファッションで洒落のめしたジャック・ニコルソンの、せっかくの仕立ての良いスーツに容赦なく血が滲み、水浸しになるのをコーヒー飲みながら朝10時から眺めるのは、なかなかオツなものであった。
 
 
 
 
 
そして時代を感じさせるアーチ状の細眉のフェイ・ダナウェイ。夫を亡くして途中から未亡人ルック、黒ずくめになるのがモノトーン好きの私には眼福。特にこの場面、深いVゾーンにぴったり沿う長さのパール、好み!
 
 
 
 
30年代のLAはまだまだ未開の地、という印象のワイルドな街で、現在の発展に至るまで、どれだけ「チャイナタウン」的な表沙汰にならない黒い利権争いがあったのだろうか…。ジャック・ニコルソンが鼻を切られる有名なシーンばかり記憶に残っていたのだけど、鼻を切る小柄な男、ポランスキー本人だったのね。ポランスキーはこの映画に乗り気ではなく、撮影中もポランスキーのせいでトラブル続きだったらしいけれど、むしゃくしゃすること多いけど俺が鼻切るもんね!って、もしやストレス解消的出演…?なんにせよ、映画のおいしいところを監督がさりげなく持って行っている。
 
 
 
 
暴力もクールに処理されたサスペンス、さりげなく凝った衣装、薄幸の女。チャイナタウンでの古傷が癒えぬまま、新たな傷が上塗りされる。観終わってみて思ったこと。ああ、これは男好きのする映画というか、男のロマンというか、この映画を特別に好きな男性はきっと多いのだろうな…。ヤクザ映画を観た後、肩で風切って歩いてしまうように、観終わった後、俺はまた大切な女を失ったよ…チャイナタウンで…ってニヒルに落ち込むジャック・ニコルソン気分がしばらく抜けなかった。女だけども。


4月の終わり、早稲田松竹でまた上映されるみたい。まだ発表されてない併映は、たぶんポランスキー特集で、「毛皮のヴィーナス」では?