CINEMA STUDIO28

2015-10-31

TIFF2015 / 走り書きメモ8

 

東京国際映画祭、金曜の走り書きメモ。これは!と思った上映が金曜の昼間だったので有給取得。本当なら映画祭の間ずっと休みたいぐらいなのだけど、何気に仕事も立て込んでる時期で、なんとか1日の休みを捻出。
 
 
最終日は受賞作品の上映、クロージングのみなので、映画祭は実質、金曜まで。この時期になると、観られなかった映画の感想もちらちら聞こえてきて、ああ…人生において、観たい映画をすべて観ることなんてできないのだ。という当たり前の現実に心がしおしおするよ。
 
 
六本木にて終日。1本目、コンペティションより日本映画、小栗康平監督「FOUJITA」。オダギリジョーが藤田嗣治を演じる、そしてヘルメットのような髪型に丸眼鏡のビジュアルがフジタの特徴を捉えている…ということで、この秋話題の日本映画だと思うのだけど、それ以上にやはり、久しぶりの小栗監督作品で、きっと人生をなぞっていい感じの音楽が流れて終わり…のような伝記映画にはならないのだろうな、と思っていたら実際そうだった。撮影が素晴らしい…!
 
 
2本目、ワールドフォーカス部門よりホン・サンス「今は正しくあの時は間違い」。有給取得の理由はこれ。だって、ホン・サンスの映画が、六本木ヒルズで一番巨大なスクリーン7でかかるなんて…これを逃していつ次があるの…?平日昼間という時間なのに客席けっこう埋まっており、みんな大きなスクリーンで観たかったのね…?それだけの人数がいるものだからクスクス笑いもなかなかの音量で、映画祭の醍醐味をしみじみじ味わう。
 
 
3本目、コンペティションよりトルコ映画「カランダールの雪」。去年の「ナバット」のような、映画祭でかかることがなければ一生、観ることもなかった景色とそこで暮らすささやかな人々の物語。どうやって物語が閉じるのだろう…と見守っていたら、そう多くはない選択肢から最良の最後が準備されており、観る前後の期待値と感想のギャップという意味ではコンペではこれが私的ダークホースだったかも。
 
 
4本目、もちろんこの頃には心身へろへろしており、もう壮大な自然とか政治問題とか受け入れるキャパはありません…という状態だったのでチェコ映画「家族の物語」、最適な映画を観た。前半部分で一息つきながら息を整えたから、後半の展開にも着いていけたというもの。何よりも…犬!犬の演技…!Q&Aで監督から犬の演出についても聞けて大満足。
 
 
最終日、観客賞とグランプリの上映チケットも購入したので、今年は全部で18本。コンペティション中心に観る、という自分との決め事どおり全16本中14本観ることができた。全てのラインナップの中で、見逃して特に気になるのは…フレデリック・ワイズマン「ジャクソン・ハイツ」かな?巨匠の新作だもの、公開されることを祈りつつ、観た映画の詳細は、追って時間をかけて書いていくつもり。

 

2015-10-30

TIFF2015 / 走り書きメモ7

 
東京国際映画祭、木曜夜の走り書き。新宿会場へ。写真は別の日に六本木ヒルズのほうで撮った。新宿ったら映画祭気分希薄でポスターすらなかった(探せなかっただけかしら…)ので、六本木が恋しかったわ…。
 
 
コンペティションのメキシコ映画「モンスター・ウィズ・サウザン・ヘッズ」。去年同じくコンペで観た「ザ・レッスン」のように、救いを求めて起こした行動が雪だるま式に大事に至るという物語と読んだので、「ザ・レッスン」を楽しんだ私はこの映画も楽しみにしていたのだけど…。
 
 
75分という短さで、事が始まって収束するにはどうもテンポがもったりしており、省略すべきでないところを省略しすぎて物語が見えなくなっているように思えた。そして主人公が凶行に走る動機の部分の描写が少なく、ただの悪質なクレーマーにしか見えない。ん?と思ってるうちに75分は過ぎ、前日の「ヴィクトリア」140分があっという間だったけど、この75分はなかなか長かったぞ。
 
 
「ヴィクトリア」で目が肥えてしまっていただけで、もっと集中できていればこの映画の面白さももっと見つけられたのかもしれない。しかし今回の映画祭、観る映画を選ぶにあたっての勘が冴えわたり、ありえないほど当たりを引いていたので、たまにこういう、ん?というのに出会わないと却って不安、という気分にもなっておる。
 
 
映画祭もいよいよ終盤!

 

2015-10-29

TIFF2015 / 走り書きメモ6




東京国際映画祭、水曜夜の走り書き。映画祭も私の体力もいよいよ佳境・・。


新宿会場へ。ワールド・フォーカス部門からドイツ映画「ヴィクトリア」。ベルリン映画祭で上映された記事を読んでから日本で観られますように!と祈ってた1本。


舞台はベルリン。深夜、クラブで1人で踊るヴィクトリア。ベルリンっ子の4人の男たちに声をかけられ、長い夜が始まる。特筆すべきは140分ワンカット!深夜から夜明けまでの140分の物語で、そのまま一度もカットなくカメラは物語を記録し続ける。


「エルミタージュ幻想」はじめ、ワンカット映画は他にも存在するけど、この映画の特筆すべきはカメラが街を動き回ること。クラブ、アパルトマンの中から屋上、地下の駐車場、銀行・・・を、徒歩、自転車、車で移動しながらもカットが途切れない。


はぁぁぁ!よくぞこれを考えた!そして撮った!観終わった私は心の中で長い長いスタンディングオベーション、キャスト、スタッフ、エンドロールに流れる名前のすべてを讃えたい。そしてヴィクトリア、潔くヒロインの名前そのままのタイトルどおり、これはヴィクトリアの物語。ああ、観た映画の数だけ女優がいるわけだけど、ヴィクトリア、我が心の2015年最優秀主演女優賞はあなたに贈るって、約束するわ。


TIFFでの上映は終わったけど・・・


11月、ドイツ文化センターで上映があるもよう。おすすめ!


写真は、映画祭気分皆無のWALD9。

2015-10-28

TIFF2015 / 走り書きメモ5




東京国際映画祭、火曜夜の走り書き。仕事の後、表参道からの移動は、この間発見した港区のコミュニティバスで。どこに着くのかな?と思えば、ちゃんとヒルズの車寄せに着いた。






満月。かっこいい月を最後にお見かけしたのは長野だったから、あれから1ヶ月経ったのだな。あいかわらずかっこいいですね。





定位置から写真を撮らんと苦闘していると、ヒルズで働いてると思わしき人から声をかけられたので、今日の東京タワーはどうしてあんな色なのですか?ピンクリボン?と尋ねてみたら、東京タワーはしょっちゅう色を変えてるんですよ。と教えていただいたのだけど、真相はわからなかったので、映画が始まるまでの間、ヒルズから月の写真を撮った別の人の写真を眺めていると、満月の夜、東京タワーの上半分は消灯すると知った。うつくしき謙譲の精神。


コンペティション、楽しみにしていたタイ映画「スナップ」。本国でもこれから公開で、これがワールドプレミアなのだとか。週末にスクリーン7での上映を観たかったのだけど、他の映画を選んだので小ぢんまりとしたスクリーン1で。大きなスクリーンで観られる幸せに越したことはないけれど、この映画のささやかさと、その後のQ&Aの盛り上がりの親密さは、小さめのスクリーンならではなのかもしれない。


ざっくりと、胸キュンもの、ということは読んでいたのだけど、監督の前作「タン・ウォン」を去年の映画祭で観ていたので、そうそう爽やかなだけの映画ではあるまい。と思っていた。前作に比べて、タイの不安定な政情についての描写は、かすかに香る程度の散りばめられ方だったけど、よくよく考えてみたらそれがストーリーの核になっている。甘酸っぱい気持ちで映画を観終わると、Q&Aの監督の現実的なトークに印象を覆された感もあり、作った人の話をすぐ聞くことができる、という映画祭ならではの素晴らしい観賞だった。これは後ほど、一昨年から何本か観た、どれもどれも素晴らしいタイ映画のことも絡めてちゃんと記録しておかねば・・・。


あと1回上映あり。


Q&Aについても触れられている。
http://www.cinemacafe.net/article/2015/10/28/35215.html


映画とQ&Aでほかほかした身体で駅に向かいがてら、ふとそちらを見てみると、23時過ぎ、もう月は主役の座をおりたのか、東京タワーはいつもの色で煌々と光っていた。

2015-10-27

TIFF2015 / 走り書きメモ4




東京国際映画祭、月曜夜。六本木から離れて、新宿会場へ。去年も日本橋会場に行った日が1日だけあったのだけど、映画祭気分が希薄で寂しかった。なんとか新宿の素敵なところを見つけて自主的に気分を盛り上げてみていたところ、満月まであと一日の月が煌々としていた。






カメラの設定を変えて撮ったら、ブレッソン「白夜」のオープニングのような光の滲み






WALD9、というシネコンが苦手なのだけど、映画祭会場だからしかたなし。なんとか良いところを探して自主的に気分を盛り上げてみたところ、あ、隣が世界堂!銀座の伊東屋がセレクト文具屋(陳列はもったいぶって、商品量は少なめ)に変貌しちまった今、雑多に積まれるあらゆる商品から、好みのものを見つける楽しみは世界堂に担ってもらうしかない・・・



月曜夜、コンペティションから「ガールズ・ハウス」。イラン映画。毎年、東京国際映画祭のコンペでイラン映画を観ていて外れがないので。というより、面白くないイラン映画を観たことがないので、今年も楽しみにしていた。


結婚式前日に亡くなった花嫁の死の謎を、友人2人が追う。密室のような狭い半径の物語で、謎が徐々に深まり始める展開を確認すると、胃のきりきりするような感覚がおりてきて、ああ、イラン映画を観ているなぁ・・・という感慨に至る。そういったイラン映画の愉しみを備えながらも、この映画は過去に観た他のイラン映画よりも、観やすかった。だからと言って、表層的で深みに欠けるというわけではない。ということを、今は身体の中で転がしているところ。


2015-10-26

TIFF2015 / 走り書きメモ3

 
 
 
東京国際映画祭、走り書きメモ。日曜夜。夕方の上映のチケットがとれなかったので一度、家に帰るという体力温存施策を実行。
 
 
朝から観た2本が、実話ベースの苦難を乗り越える物語で、様々な背景はすっ飛ばしても、ええ話やなぁ・・と、ざっくり言うとそのような感想を生むものだったので、どちらも興味深いのだけど、もうちょっと、こう、ガツンと身体にくるアルコール度数高めの、お願いします!と期待しつつ再び六本木へ。
 
 
コンペティションの「フル・コンタクト」はオランダ・クロアチア合作。これが・・期待どおりにガツンとくる映画で大満足。ドローンを駆使してテレビゲーム感覚で無表情で標的を殺していく主人公。あるきっかけから心の均衡が崩れていき・・・という物語。繋がっているのか個別なのか曖昧な3つのエピソードが連なり(私は同じ男の時系列の物語だと思って観ていた)、最初のエピソードからは想像もつかない展開に・・・。好き嫌いは分かれる映画だと思うけど、デヴィッド・クローネンバーグ、デヴィッド・リンチ、デヴィッド・フィンチャーなどが好み、という人(つまり私。それにしても名前がみんなデヴィッド…)には、たまらない発見。上映後のQ&Aで登壇した監督も、クレバーな印象で、この映画の裏側にこの人がいたのか!と納得度が高い。過去作も観たい・・・!
 
 
観る人を選ぶのか...?残り2回の上映はチケットもあるようです。
 
 
 
は!ここまで書いてようやく思い出したのだけど、この「フル・コンタクト」の監督も、David Verbeekだった…。Q&Aでダヴィッド、ダヴィッドと呼ばれていたのはオランダ読み?フランスだとダヴィになるよね。デヴィッドって名前の監督の映画は無条件でチェックしなければいけない気がしてきたわ…。

2015-10-25

TIFF2015 / 走り書きメモ2

 
 
東京国際映画祭、日曜の走り書き。六本木駅からヒルズに上がる長いエレベーターを上がり、空を確認して定位置から東京タワーの具合を写真に撮るの、日課になってきた。朝の東京、見事な秋日和。ま、外の天気に関係なく、ずっと屋内にいるのだけど。
 
 
 
 
チケットの大半はコンペティション、若干ワールド・フォーカスという購入結果に。今日はコンペ三昧の日。以下、とりあえずの走り書き。
 
 
「スリー・オブ・アス」、フランス映画。動乱のイランからパリへ移った家族の物語。監督兼主演のケイロンは、フランスで人気のコメディアンで映画は初監督とのこと。この物語はケイロンの両親の実話で、父親役をケイロンが演じている。フィリップ・ガレル「ジェラシー」は、フィリップの父親の愛の物語を、孫であるルイ・ガレルが演じる映画だったけど、時々こういう家内制手工業っぽい映画を見かけるなぁ。映画は笑いもあって深刻になりすぎず良作なのだけど、フランス映画祭のオープニングのほうが似合うのでは?という気もした。
 
 
ブラジル映画「ニーゼ」は、60年代当時、ロボトミーや電気ショックなど残酷な治療方法しか存在しなかった精神病治療の現場に、芸術療法の手法を取り入れた実在の女性医師の物語。ユングとも親交があった女性のようだけど、ユングではなく女性の物語なのでその描写は最小限にとどめた、と上映後のQ&Aで聞いた。「スリー・オブ・アス」も「ニーゼ」も実話ベースの物語で、エンドロールにモデルとなった実在の人物の写真が紹介されるつくりが同じだった。こういうのを続けて2本観ると、完全なるフィクションを観たくなってくる…。
 
 
映画と映画の隙間に1時間ほどあったので、ABCに本を買いに歩いていたら、珍妙なファッションの人が多く、しばらく来ないうちに六本木が原宿化したのか…と思っていたら、今日は六本木のハロウィンナイトとのこと。道路沿いに警官がたくさん立っていて戒厳令の気配すらしたのだけど…ハロウィンって、いつから警官が動員されるようなイベントなったのですか…。

 

2015-10-24

TIFF2015 / 走り書きメモ

 
東京国際映画祭!土曜、夕方の六本木ヒルズから、秋晴れに映える東京タワーを眺めると、うっすら月も出ていた。あとでじっくり書くとして、ひとまずの走り書きメモ。
 
 
金曜夜、コンペティションより中国映画「ぼくの桃色の夢」で私の映画祭ウィークスタート。80年代以降生まれの監督による「85%は自伝」という物語。初恋の行く末を見守る物語かと思えば、ラスト10分ほどの超展開に驚く。コンペに選ばれた映画が、ただの青春回顧物語で終わるはずがないと思っていたら…。
 
 
 
土曜は朝から夜まで。
 
 
まず、コンペティションから「地雷と少年兵」。デンマークの監督による、ドイツとの戦争後、残された地雷処理を強いられた少年たちの実話。監督自身「朝から観るには重い」と言っていたとおりだけど、息詰まる物語を、時折はっとするほど美しい映像が支えていて、編集の緩急が素晴らしい。
 
 
次にコンペティションから「Bone to be blue」、チェット・ベイカーの生涯の一時期を、イーサン・ホークが演じるという話題性の高い1本。歌もイーサン・ホークが歌ってる。これはイーサン・ホークのベストアクトではなかろうか。
 
さらに、コンペティションから日本映画「さようなら」。アンドロイド女優が登場する映画で、そのような映画はもちろん初めて観たのだけど、上映前の舞台挨拶、上映後のQ&Aにアンドロイドが登場するという前代未聞の経験。
 
 
土曜の最後は、ワールド・フォーカス部門からアメリカのインディーズ「タンジェリン」。チラシにあった小さな写真だけで、観ることを決めたのだけど、全編、iPhone5Sで撮られており、しかし観ているとそのような撮影背景はどうでもよくなっていく感覚が興味深い。観終わってみると、弘法筆を選ばず、ということですね、と思った。
 
 
2日通っただけなのに、濃い体験すぎる…けど、映画祭はまだまだ続く!
 
 
 
 
 
 

 

2015-10-23

TIFF2015‼︎

 
六本木に到着。大好きな映画祭、スタート。
一本目は、中国映画から‼︎

 

2015-10-22

Ozu trip/ 音語り「東京物語」

 
 
小津安二郎記念・蓼科高原映画祭。無藝荘の説明書きには、子供を演出するための驚きの距離の縮め方が書かれていた…。溢れ出る男子っぽさ。
 
 
 
9月の終わり、高原はうっすら紅葉が始まっていた。
 
 
 
無藝荘、映画祭期間は無料公開されている。
それ以外も不定期で公開されているのだとか。
 
 
 
 
無藝荘から、往復1時間〜1時間半ほど、小津監督と野田高梧さんが日課のように歩いた散歩道は、整備され「小津の散歩道」と呼ばれている。歩きたかったのだけど、バスその他の時間が合わず、土地勘もないので1時間半で帰って来れなかったらどうしよう…と思い今回は断念。高原の滞在時間は1時間未満だったけど、心地よくて静かで気に入ったので、季節を変えてまた遊びに来たい。新宿からこのあたりまで直通のバスもあるようだし、温泉にも入りたいし。
 
 
 
 
大滝も観たい!無藝荘すぐ近くに、公衆浴場っぽい温泉もあった。交通の面さえクリアすれば、至れり尽くせりの場所。小津さんが気に入って選ぶはずだわ…。
 
 
 
 
そしてこんなバス停で本数の少ないバスを待つ。この錆びっぷり、もしかして小津時代からあるのではなかろうか…。バスにまた30分ほど揺られて下山。朝食を食べてなかったので(そして高原にも何もなかったので…)蕎麦屋でしっかり昼食を食べ、食後の散歩がてらちょっと離れた場所にあるお菓子屋まで歩き、和菓子や洋菓子を少しだけ購入。
 
 
 
 
メイン会場の茅野市民館へ戻る。昨日、新星劇場で珈琲や寒天菓子をいただいて、ボランティアの方々のおもてなしに感動したのだけど、メイン会場だけあってこちらはさらに豪華で、豚汁や田楽などもあった。食事の心配も要らないね…。そして司葉子さん含む映画祭のゲスト御一行も高原から下りてきたようで、テントの下で何かを頬張る司葉子さんを遠目に眺めながら、珈琲を飲む…。規模の小さな映画祭ならではの光景だわ…。
 
 
 
 
帰りの電車の時間もあって、2日目、唯一観た(聴いた?)のは、映画ではなく、中井貴恵さんによる「東京物語」の音語り。音語りとは、ピアノ伴奏つきで映画1本分の脚本を朗読するもので、とはいえ2時間分の脚本をずっと聴くのも読むのもしんどいものなので、1時間版に短縮したバージョン。短縮版は、小津映画のプロデューサーだった山内静夫さんが担当されたとのことで、開始前に中井さんと山内さんのトークが少しあった。
 
 
中井貴恵さんは、小津映画にも出演していた俳優・佐田啓二さんの娘さんで、佐田さんが小津監督に息子のように可愛がられていたため、貴恵さんも孫のように可愛がられ、幼い頃の記憶にある小津監督は、偉大な監督とはつゆ知らず、お酒好きの楽しい謎のおじさん、だったそう。
 
 
そもそも佐田啓二さんと奥様(松竹の撮影所近くの食堂で働いていた人…だっけな…)の仲人は、小津監督にお願いしたのだけど、監督は独身で、仲人は夫婦一組がつとめるものだから、もう一人、独身の木下恵介監督と男2人で仲人をつとめたのだとか。
 
 
世田谷にある佐田家に、小津監督はしょっちゅう遊びに来ていたそうで、小さい貴恵さんを膝に乗せ、お酒をちびちび飲みながら、時々、お酒を指ですくっては、ちょんちょんと貴恵さんの唇に含ませたものだから、佐田さんの奥さんがすっ飛んで来て、監督、小さい子にやめてください…!と騒いだそうだけど(冷静に考えたらなんちゅうことするねん…)、そのせいか他の家族みんなが下戸なのに唯一、貴恵さんだけがお酒大好きに育ったらしく、「小津好みという言葉がありますが、私の場合は、小津仕込み、だと思っています」と、おっしゃっていた。
 
 
そうして始まった「東京物語」音語り、映画を思い出しながら聴いていると、1時間に短縮されている分だけ当然、抜け落ちている描写や場面はあって、削られた、何でもない仕草や、例えば杉村春子の歩き方…のような台詞はないけれど目に映るものの積み重ねが、自分にとっての小津映画だったのだな、と思う。中井貴恵さんが老若男女のキャスト分の声色を使い分け1本の映画を語る、という難しいことをやってのけておられて、笠智衆や東山千栄子の尾道弁の声色は特に見事。逆に違和感を覚えたのは原節子の台詞で、原節子って外見の特徴以上に、私にとっては声や台詞回しの特徴のほうが強い印象のある人なのだな、と気づく。ちょっと甘くて台詞の前半に抑揚の山があって、語尾がふっと曖昧にぼやけるような消え方をする。あの話し方は原節子独特のものなのだなぁ、と音語りを聴いて初めて思った。
 
 
前半はそのように、ぶつぶつ考えながら聴いていたのだけど、後半、特に舞台が尾道に移って以降は余計な思考が消えるほど物語に引き込まれ、改めて脚本の見事さ…何でもない台詞を積み重ねてるだけのはずなのに、その見事さ…と、それを一人で立体化してみせる中井貴恵さんのチャレンジ、蓼科まで来て、ここで経験できて良かったなぁ…。
 
 
音語りのラインナップは「晩春」や「お早よう」などもあるらしく、他の映画も是非聴いてみたい。中井貴恵さんは、小津監督が選びそうな、落ち着いた小津好みの着物を着てらして、帯揚げが赤だったのは、小津監督の赤の美術に因んでのことかしら。
 
 
終わって外に出ると、帰りの電車まで30分もなくて、なかなか効率良い時間割を組んだものよ。茅野市民館の広場はボランティアの方や観客で盛り上がっていた。市民館は駅直結で通路部分が図書館スペースになっていたりする、遠方から来た私のような観客にも親切便利な場所だった。
 
 
 
駅に向かって通路を歩いていると、前をまた司葉子さん御一行が歩いておられて…私の映画祭の記憶の半分ほどに司葉子さんが存在していた…贅沢なことだわ…。あのバイカラーのパンプスはシャネルだろうか…。
 
 
 
曇天続きだったけど、いざ帰らん、というタイミングでこの青空。これぞ秋日和。茅野駅のお店で蕎麦、野沢菜、牛乳寒天の素(かんてんぱぱ製品)を買って、あずさに乗る。短い滞在だったけど、堪能したなぁ。毎年プログラムをチェックして、また映画祭に参加したいな。その時はかんてんぱぱ製品をもっと買って帰るんだ…(決意)。そう、すっかりここで寒天にハマった。ボランティアの皆様、素敵な映画祭と美味しい寒天菓子をありがとうございました…!
 
 
↑ 映画祭の写真が追加されてる…!
 
 
 

 

2015-10-21

Ozu trip / 続・無藝荘

 
 
小津安二郎記念・蓼科高原映画祭。期間中、無料公開されている無藝荘。一室は博物館のようになっていた。たくさんの写真、本。写真は初めて観るものも多かった。
 
 
 
野田高梧さんの「三時のバスで誰かにくると思いしも誰も来ず 依って山道を散策」という「蓼科日記」からの一節、さっきバスに乗ってここに着いたばかりだから、その感覚は肌身で想像できた。男性2人で山に篭って脚本を書いて煮詰まると、誰かが遊びに来てくれるの楽しみだっただろうなぁ。
 
 
靴を脱いで上がって、この部屋に入ると、先客、華やかな装いのご婦人がいらして、一瞬、目が合い、あれ…どこかでお見かけしたような…と思っていたのだけど、あれは…司葉子さんでしたね。前日のトークショーで拝見していたのに、ぼんやりして頭のピントが合わなかった。司葉子さんが小津監督の資料をご覧になっているところを同室でお見かけする、という貴重な時間だった…。あわわ。
 
 
 
奥にある水場エリア。お風呂だと思われる。
 
 
これは手洗い場。
台所は別にあるようなので、顔を洗ったり歯を磨いたりの場所かな。
 
 
 
左側が広めの部屋…20畳はあっただろうか…なのだけど、先客が数人いたので写真は自粛。囲炉裏もあり、少し肌寒かったので火のそばで暖まった。映画を観ていないので推測だけど、同席していたのは「ソロモンの偽証」の監督と女優さんだったと思う。そう広くない場所にいろんな人が集っていて、あわわ、という気分になったので、さっと室内を見学して、外へ。
 
 
 
 
玄関から外。茅ヶ崎館の二番の部屋でも思ったのだけど、無藝荘もあまり広くはない。小津監督ほどの人であればもっと広い場所を探すこともできただろうし、男2人が始終、顔をつきあわせて過ごすには狭いのではないかしら…と思うのだけど、小津監督は、あの狭さこそ心地良かったのかな。そして二番の部屋も無藝荘も、室内は広くないけれど、窓が大きくとられていて、外の様子がよくわかる。篭って物を書く人ならではの好みの空間というのはきっとある。
 
 
 
 
そして小津好みの空間…広くなさ。や、窓の広さ。は私好みでもあるなぁ。と、茅ヶ崎館、無藝荘と巡ってみて思った。

 

2015-10-20

Ozu trip / 無藝荘

 
 
小津安二郎記念・蓼科高原映画祭、2日目の日曜日。茅野駅近くに宿泊。起きたら窓の外、雲と山と街の割合はこんな感じで。
 
 
チェックアウトしてバス乗り場へ。このような場所はバスの本数もきっと少なかろう…と執念の事前検索で時間も調べておいた。ぐんぐん標高の高い方面へ登ってる感触のある走行で、30分ほどで「プール平」というバス停に着いた。地名の由来は、別荘地でプールが多かったから…という説を何かで読んだ。バスを降りたはいいものの、右も左もわからん…と思っていたところ、目の前に観光案内所のような建物があったので、つかつかと入り、中にいらした女性に道を尋ねると、質問したのが申し訳ないぐらいすぐそこだった…。
 
 
 
バスで通り過ぎたようなのだけど、本当にすぐそこだった…
 
 
 
 
さて近づいてみましょう…
 
 
 
 
小津安二郎 野田高梧(脚本家)縁の地であることを示す石碑
 
 
いただいた無藝荘の資料から。「昭和29年夏、前年に『東京物語』を撮り終えた小津は、脚本家であり盟友の野田高梧に伴われ、初めて蓼科高原の野田の山荘「雲呼荘」を訪れました。(中略)蓼科の自然、人情、旨い酒がすっかり気に入り、それまでの「茅ヶ崎館」から蓼科に仕事場を移し『東京暮色』以降、没するまでの七作品全てのシナリオがここ蓼科で書かれることになります。」
 
 
 
「(中略)「雲呼荘」はすでに取り壊されて現存しませんが、小津が仕事場として、また東京から訪れる映画関係者などの接待の場所として使用した『無藝荘』が残っています。昭和初期に製糸業で名高い諏訪の片倉家が、地元の旧家を移築し別荘とした『片倉山荘』(木造平屋建て約126平方メートル)を、昭和31年に蓼科に腰を据えシナリオを書き始めた小津が借り『無藝荘』と命名しました。」
 
 
引用終わり。それではいざ、中へ。つづく。

 

2015-10-19

Ozu trip / 繕い裁つ人

 
 
小津安二郎記念・蓼科高原映画祭。3本目は「繕い裁つ人」。映画祭は小津映画だけではなく、日本映画やベイマックスもプログラムされている。初めて行ったので、私は小津にちなんだスケジュールを組んだけど、そうじゃなければ「ソロモンの偽証」やらインディーズ映画も観られる。「秋日和」終了後の予定はどうしようかな…と思っていたのだけど、高原に向かうバスは本数が少なく時間が合わず、街にいるしかないけど特にやることもないので、流れでこの映画を観ることに。
 
 
「町の仕立て屋と常連客たちとの織りなす日々を描いた池辺葵の同名人気コミックを実写映画化」、舞台は神戸。中谷美紀さん演じる仕立て屋は、祖母の跡を継ぎ、頑固で変わり者という設定。仕立て以外のことは何もできず、煮詰まると喫茶店でチーズケーキを1ホール丸ごと食べてしまう、という役。
 
 
撮影も綺麗だし、洋服も素敵だし(私の好みではないけれど)、つまらなくはないのだけど、主人公が変わり始めて、ここから物語が展開するのかな…と思ったところで歌とエンドロールが流れてきたので驚いた。起承転結の転あたりだったと思うのだけど、転〜結はご自由に想像してください、歌でも聴きながら…ということなののかしら?生活系雑誌(…というの?)から抜け出してきたような設定のこういう映画、ほとんど観ることはないけど、ずいぶん前に観た「かもめ食堂」も、さぁここからだ!というところで終わってしまったし、私がしぶとくて空気を読んでないだけなのかしら…。
 
 
ということで、この映画についての感想は「ああ、チーズケーキ食べたいな」ということ。
 
映画より上映後の三島有紀子監督(すごい名前…と思ったら三島由紀夫にちなんでつけられた本名らしい)と、助演の片桐はいりさんのトークのほうが記憶に残ってる。
 
 
小津安二郎記念ということで、小津映画に因んだトークも若干あり、監督が円覚寺の小津家のお墓に行った後、お寺の裏手からかつて小津家があった場所まで抜け道のような小道があるけれど立ち入り禁止らしく、そしらぬふりをして歩いてみて、誰かに咎められたら「迷い込んでしまって…」と言い訳しようと思っていた、というエピソード。この間、北鎌倉で、小津家はどこにあったのかな…と思ってたのだけど、お寺の裏手なのね…ふむふむ…。
 
 
片桐はいりさんは小津監督の追っかけのようなこと、つまり全国の小津監督ゆかりの地を巡っているとのこと。私も湘南、蓼科…と巡って、次はどこかな…と思っていたので、そ、そこ詳しく!他にどこへ?!と前のめりになったのだけど、トークは次に流れ、片桐はいりさんが時々、キネカ大森でもぎりをしていることや、世界や日本のあちこちで映画館めぐりをしている、という興味深いお話に。気になりつつ著書を読んでいないのだけど、お話も面白かったことだしこれを機に読んでみようかな。
 
 
と、ほとんど映画の感想になっていない。初日は3本観終わると7時前、駅前にいたけどとにかく店じまいが早いので、目をつけていた蕎麦屋まで急いで向かい、無事に蕎麦とダイヤ菊を堪能。
 
 
 
 

 

2015-10-18

Ozu trip / 秋日和アフタートーク

 
 
小津安二郎記念・蓼科高原映画祭。「秋日和」の上映後は、主演の司葉子さん、プロデューサーの山内静夫さん、撮影監督の兼松熈太郎さん(撮影当時は撮影助手)が登壇されてトーク。考えてみれば、小津映画に関わった方の話を聴くのは初めてだったのではなかろうか。
 
【司葉子さんと監督の出会いについて】
 
・(司葉子さん)当時、毎年あったプロデューサー協会のパーティーが主催。五社のプロデューサーや監督が勢ぞろいするので、女優も張り切って着飾って出席していた。司さんは東宝所属の女優。斜め前のテーブル、柱の奥に小津監督が座っていて、司さんのほうにチラチラと視線を送っていた。小津監督だと知らなかったけど周囲の人にその場で教えてもらって、挨拶した。
 
・(山内静夫さん)小津映画の主役を決めるのは重要なことで、慎重に選んでいた。
 
【原節子さんとの共演について】
 
・(司葉子さん)原節子さんは、子供が大きすぎると言ったそうですが…(娘役の司葉子さんが年齢的に大きすぎる…)
 
・(山内静夫さん)女優さんは皆、母親役を初めて演じる時はそのようにおっしゃいます。
 
・(司葉子さん)私は原節子さんの大ファンで、ファンレターを出したこともある。何でもいたします、おそばに置いてください、という内容で。だから小津監督の映画ということ、原節子さんと親子役で共演すること、2つの方向からプレッシャーがあった。今だったらもっと上手にできたのではないか、と思うけれど、原節子さんとご一緒できたのは念願が叶った。みんなから憧れの人でした。
 
【小津監督の本物志向について】
 
・(山内静夫さん)映画の中に登場する絵はすべて本物。当時の有名な画家や文士のことを小津監督はほとんど知っていて親交があり、現場にもよく訪問してきていた。絵はすべて本物だから、撮影が終われば白い手袋をつけて専門の人が倉庫にしまう。撮影が延びて日曜にさしかかり、倉庫が開いておらず、撮影が止まったこともある。
 
・(司葉子さん)小津好み、という言葉があるけれど、小津監督の周囲にいるスタッフも、みんな素敵な方ばかりでした。
 
・(兼松熈太郎さん)撮影がも、カメラの前で物を動かす時、(撮影所が大船にあったので)、海寄り、山寄り、大船寄り…と小津監督が指示して1cm単位で動かしていた。器もすべて本物で、配置も計算ずくだった。

・(司葉子さん)位置を決めるのに午前中いっぱいかかり、緊張のあまり初日は気絶した。箸の持ち方、上げ方も指示され、立ち方も直立不動ではなく背中を少し曲げるように指示された。

・(山内静夫さん)俳優の演技より、全体の構図が綺麗であることが大事。その積み重ねが映画になる。物もいい物、悪い物は映りが違う、それなりの物はそれなりに映る。いい物を映せば全体が引き締まり、俳優の緊張感も高まる、という考えだった。画家ともつきあいが多く、よく飲みに行っていたようで、親交を深めて、映画に絵を借りようという魂胆があったのかもしれない。

・(司葉子さん)着物にも誰よりも詳しく、女優の着物もすべて選んでいた。でも、洋服にはあまりうるさくなかった。

・(山内静夫さん)洋服は好きではなかったのかもしれないですね。食べ物も一流で全部本物だった。映画の中にトンカツが登場するなら、上野の蓬莱軒から職人を呼んでセットで本物を食べていた。あのこだわりは真似のできないこと。

【海外での人気について】

・(司葉子さん)政治の仕事で(司さんの旦那さんは政治家なので)フランスに行き、各国の奥様方と交流した際、小津監督の名前を出すと、皆さんひっくり返って盛り上がりました。

・(山内静夫さん)日本よりフランス、イギリスで人気が高い。ヨーロッパでは黒澤より小津のほうが人気がある。
 
・(兼松熈太郎さん)撮影の会合でヨーロッパに行った時は、小津組と紹介されると、スタンディングオベーションしてもらった。

・(山内静夫さん)関わった人はみんな、小津監督の恩恵をずっと受けている。料理でも何でも同じだけど、本物の味はみんな忘れられない、ということでしょう。


最後に、司葉子さんが、原節子さんの現在についてお話をされた。今も交流があり、時々電話で話すと何時間も話し続け、芸能界で現在も交流のある唯一の人、とのこと。「とってもお元気よ!」と、おっしゃっていたけれど、原節子さんが現在もお元気、ということが今ひとつ現実感としてピンとこなくて、聴きながらきょとん、とした。

 

2015-10-17

ホームムービーの日 in 京橋

 
本日の映画たち。10月の第3土曜日は、国際的なイベント、Home movie day!毎年気になりながらも、毎年何かしらこの日は予定が入ってて無理だったのだけど、今年はフィルムセンターが会場で、朝11時からの回もあるとのことで初めて上映に参加。
 
 
詳細の説明はこちら。同じ日に世界のあちこちで同じイベントが開催されている。
 
 
会場はフィルムセンターの小ホール。地下のほう。受付で上映作品リストをいただくと、場内最前列近辺は招待席。そこで皆さん記念撮影されたり和気藹々。上映リストを眺めると3分〜のサイレントが多く、撮影は60年代〜80年代。主に東京で撮影されたもの。
 
 
主催の方からの説明があり、上映が始まる。完全サイレント状態で観るのかと思えば、主催者と撮影者、撮影者が亡くなっている場合、代理の方がいらしてて、質問とそれに答える形の会話形式で映像を説明していく。フィルムセンターのある京橋の町内会の方が中心となり映像を提供したようで、当時の京橋、銀座界隈が映ってるものが多かったな。お祭り、パレード、都電が営業を終える最終日の様子。
 
 
お祭りの映像を撮影者が説明しながら、「家内も映ってます」「16年前に亡くなったんですけど」と説明されて、ああ、これはただの記録映像ではなくて「ホームムービー」なのだな、とハッとしたり。通りの名前が今と変わっていたり、昔は都電、何番がどこまで行く経路か、すらすら覚えていたんだけどね、と説明があったり。
 
 
代々、家業の会社を営む人が、日課として社員と皇居一周を走っていて、大会をした日の映像は、皇居付近の景色、走ってる様子、順位、そして会社に戻った後の表彰式の様子。撮影者も映っていて、後から挨拶された現在の姿は、すっかり40年経った姿だったり。
 
 
楽しかったのは、神戸に赴任していた時期の子供の成長の様子を撮った映像。お正月、七五三、誕生日。徐々に女の子が成長していって、最後に挨拶された時、成長した(40代?)の娘さんも一緒にいらしてて。
 
 
映るたびに仮面ライダーのポーズを繰り返す男の子が映る映像も面白かった。映ってる歩けるようになったばかりの双子が、今はもう親になっていて、撮影者はお祖父ちゃんになってて、今日はその孫の運動会の応援に行ってるから会場に来てなくて、代理で身内の方が説明、挨拶されていた。
 
 
それから69年、アポロ11号の宇宙飛行士が3人来日して銀座でパレードした様子。単にパレードの様子だけでなく、その日の銀座の様子も前後に撮られており、映像も鮮やかで活き活きしていて驚く。撮影者はもう亡くなっていて、お孫さんが説明、挨拶されていた。「祖父は写真も撮る人だったのですが、いつも前に前に行って構える人でした」とのこと。本郷界隈にお住まいで、東大の学生運動の映像もばっちり撮っていたらしい。観てみたい。
 
 
それ以外に、アマチュアホームムービーにしては、編集も凝っててプロっぽいな…という、いかにも仕上がりを意識した映像のものは、観ていてあまり面白くなかった。そのような作為を感じる映像より、ラフな映像であっても少年の仮面ライダーポーズのほうがよほど面白い、ということが興味深い。ホームムービー、普通のことが普通に映ってるのが魅力なのだなぁ。ということを、初めて上映に参加してみて知った。
 
 
日本での活動は根津界隈にある団体がメインらしく、確かに夜は根津協会でも別プログラムで上映があったのよね。例によって10月第3土曜日の夜は予定が入ってしまっていてそちらは観られなかったのだけど。今回とても堪能したので、注意して来年以降はこの日は予定を空けておくようにしなくちゃ。

 

2015-10-16

Ozu trip / 120years

 
 
小津安二郎記念・蓼科高原映画祭、無藝荘に飾ってあった写真。この岸恵子との写真は初めて観たな。
 
 
東京では松竹120年祭開催中で、明日から小津ウィーク。「秋日和」は映画祭で観たし「彼岸花」も最近DVDで観たから(浪花千栄子!)、「お早よう」を時間が合えば観たいなぁ。ずいぶん長い間観ていないように思う。
 
 
デジタルリマスター版ということに加えて、英語字幕つきのが上映される回もあるので、東京にいる外国人にもお薦めしたい上映。この間、日本のインディーズ映画を観に行ったら、外国人のお客さんが来ていて、こんなにささやかな映画をどうやって見つけ出すのだろう…と思っていたら、上映後のトークで登壇した俳優さんが「どうやって知ったの?」と問いかけていて、「英語字幕の映画を探したら、これが見つかったから」と答えていた。海外の映画祭に出品された映画だったから、字幕がついていた。
 
 
私は、といえば東劇に入ったことがないし、前を通りかかっても、この先きっと縁がないのだろうと思っていたから、今回ようやく入れるようで嬉しい。

 

2015-10-15

Today's film

 
本日の映画…の前に、2本立てで観たかったのだけど間に合わないからラスト1本のみ。待ち時間が長くて、その間にすべきことをするには机・椅子・集中が必要だったので名曲喫茶ライオンへ。10年ぶりではなかろうか…。中も外も何ひとつ変わっておらず、集中できたのだけど、途中、時々、ん?音が大きすぎるな…など思っては、は?自分から名曲喫茶い入っておいてその我儘は何?と自分にツッコミ入れた。名曲喫茶が好きだけど、いつもほとんど音楽は聴いてない。
 
 
 
映画は旅である。シネマヴェーラのロードムーヴィー特集、ラスト1本はプレストン・スタージェス「サリヴァンの旅」!書き始めると長くなるので、また今度。と言いながら書いてないことの多さよ!でもスタージェスを観られる機会は貴重なので、絶対に記録するぞ…!

 

2015-10-14

Ozu trip / 秋日和

 
 
書くことがいろいろ積もってる気がするのだけど、映画祭が始まるまでに書き終わるかしら。中断してる小津安二郎記念・蓼科高原映画祭の続きから。
 
 
初日の2本目は茅野市民館で「秋日和」。1960年松竹のカラー映画。デジタルリマスターされたバージョンでたいへん鮮やか。小津映画といえば「娘の嫁入りを気にかける父」だけど、この映画は「気にかける母」の物語で、これまで「気にかけられる娘」サイドにいた原節子が母親役にまわり、娘は司葉子。原節子は未亡人で、亡くなった夫の七回忌法要から物語はスタート。集まった夫の同級生たちが、まず娘の結婚を気にかける。しかし娘は母を一人にすることを気にかけており、それなら母親の再婚も同時にと、おじさま方が悪だくみ…という展開。
 
 
原節子は本郷の薬局の評判の看板娘という出自で、色めきたった学生たちが代わる代わる用もないのに薬屋に行き、射止めたのが亡くなってしまった夫。集う同級生たちも用もないのに行った組で、今でも原節子のことは綺麗だねぇと讃える仲間。本郷の学生、ということでおじさま方、さりげなく東大卒という設定。
 
 
この映画は特に赤も鮮やかで、美術や小道具に目を奪われるのだけど、今回は司葉子の同僚役の岡田茉莉子に釘付けに(しつこく書く)。場末(ってどこ?)の寿司屋の娘・百合ちゃん。さっぱりした江戸っ子らしい快活さで、母との関係に悩む司葉子の背中をぐいぐい押す。しかし百合ちゃんは母親を亡くし、今の母親は再婚相手で、司葉子へのアドバイスのキレのいい台詞まわしの端々に、百合ちゃんなりに自分の境遇を受け止め、前を向いてきた芯の強さを匂わせる。
 
 
七回忌法要で始まった物語は、小津映画らしく結婚式で閉じ、このような展開では最後の場面は、「残された家族」が映されることが多いけど、この映画では1人になった原節子の部屋に、結婚式帰りの百合ちゃんが訪ねてくる場面で終わるのは、彼女も「残された」からか。不在の人物が画面に映る人物と同じように濃く語られ、大団円のように見えて家族がゆっくりと散っていく小津の物語で、最後にやってくる百合ちゃんを観て、ああ、これは百合ちゃんと、亡くなったお母さんの物語でもあったのだな。「麦秋」の淡島千景しかり、主人公の親友ポジションは、こういった活きのいい女性が描かれるけど、記憶の中の印象以上に奥行きがあった百合ちゃん、小津映画の中でもとりわけ好きな登場人物になった。おじさま方との掛け合いが可笑しいことは言うまでもなく、百合ちゃん家に遊びに行って、2階でだらだら喋ってたら下から寿司桶が運ばれてくるような夜、過ごしてみたい。

 

2015-10-13

Reborn

 
 
24時間ほど体温39℃超えの世界をゼロ・グラヴィティのサンドラ・ブロックばりに彷徨い、徐々に下がり始め、今朝平熱(35℃台である)に戻り、午後から仕事して歯医者までキメて生還。一昨年の風邪の時もお世話になったリボーン薬局という名前の近所の薬局を愛してる。リボーンの名に偽りなさすぎる。音楽の才能があったら、葛根湯、お前を離しはしない〜♪という主旨の演歌を作曲したい。
 
 
そして、ちらちらWeb上で見かけていた、マット・デイモンがまたもや宇宙に取り残される映画ってこれなのね。大作映画の情報はギリギリまでよく知らなかったりする。かなり前から報道され始めるから、公開の時期まで長くてぼんやりとしか記憶に残ってなくて。
 
 
 
 
日本では2月公開のもよう。それまで長いな…と思うけど、ずいぶん前から楽しみにしてる 007の新作が12月なのだった!体力が戻ると未来が俄然楽しみになる。思考とは現金なものであるなぁ。

 

2015-10-12

cinema memo etc...

 
 
体温計の電池が切れていて昨夜は測れなかったので、今日の夕方ようやく、ふらふらとセブンイレブンに買いに行き、向かいの薬局で葛根湯も買って、測ってみたら39℃越え…。知ってしまったらくらくらしたから、測らなければよかったのかしらん。
 
 
朦朧としながら「岸辺の旅」のことを思い出すと、失踪したまま亡くなったらしい夫が突然帰ってきて、亡くなるまでの間、お世話になった人たちを妻と訪ね歩く物語で、生きてる人と死者が自然に混じり合う。霊感はほぼないと思うのだけど、この映画のような世界に違和感を感じず、私が見てる世界から特に遠くないよ。と思うのは、生まれ育ちというか、古墳が密集する、神話のメッカのような場所で育ったからだろうか。肉体が消えるだけでこの世からは消えていない、と自然と思っているようなところがある。
 
 
さて寝ます。朝になったら熱、下がってないかなぁ…。
 

 

2015-10-11

Today's film

 
 
古い映画を観ることが続いていたので、連休は新しい映画を。今日は黒沢清監督「岸辺の旅」をテアトル新宿で。監督と蒼井優さん、録音、助監督、プロデューサーと黒沢組の皆さんの上映後の挨拶つき。
 
 
夏だったからか、いつものことか、生死のあわいのことをここのところ考えていたので、ずばりな物語だった。話題になってる蒼井優さんのシーンは、本人から、おおっ!ということを聞けたので、追って記録するつもり。夏の間、動き回ったつけがきたのか、季節の変わり目だからか、帰り道、悪寒、関節痛、ああ…これは風邪のはじまり。死者がたくさん出てくる映画を観たから…では、ないと思うのだけれど。