CINEMA STUDIO28

2015-12-23

Christmas in July

 
 
映画というテーマ縛りで、毎日書く。という自分との約束のもと、去年の冬至からリスタートしたこの日記、1年間続いた。書くことがなくて困るということもなく、案外できるものですね。旅日記などを挟むからなのだけど、365日書いても観た映画をすべて記録できているわけではない事実にあわあわ。自分にとってアーカイブとして機能するものなので、SNSは飽きたら躊躇なくやめるとしても、日記は続けようと思っておる。書いている間は完全に自分の世界だからということなのか、忙しい時ほど隙間を縫って書く時間はセラピーのようだった。日課の効能、というのは多分にあると思う。
 
 
最近は家で映画を観る比重を増やしつつあり、クリスマスに因んで観たうちから1本。1940年、プレストン・スタージェス監督「7月のクリスマス」。
 
 
コーヒー会社で働く若く貧しいカップル。男は賞金狙いで別のコーヒー会社のスローガンコンテストに応募。選考が難航し結果発表がグズグズ遅れる中、同僚のいたずらで大賞受賞の電報が届く。浮かれた彼は恋人に指輪を、ママに夜はベッドになるソファを、近所の子供達にプレゼントを買うのだが…という筋書き。
 
 
70分に満たない中篇ながら短さを感じさせず、物語がどんどん展開するのはさすがスクリューボールコメディの名手。お得意のコメディ要素もありながら、背景に当時の深刻な不況や、金銭や名声を前に態度を翻す人々への皮肉も織り込んであり、スタージェスの名作「サリヴァンの旅」も彷彿とさせる。スタージェスのスクリューボールコメディは必ず、何かが派手に破壊される場面があるのだけど、所々そんな描写もあって、短いながらスタージェス要素がしっかり詰まっている。ざっくりした印象では、ルビッチの洒脱な部分は弟子であるビリー・ワイルダーに受け継がれ、ただしワイルダーはあまりに巧みすぎて時々まとまりすぎの印象も受け、そしてルビッチの狂気をさらに煮詰めたのがスタージェス、ただし観る人を選ぶ、という感じ。
 
 
 
 
「7月のクリスマス」、男は2万5000ドルという高額賞金狙いでスローガンコンテストに応募したように見せかけ、彼自身がスローガンを考えることに己の才能を感じており、世に出るチャンスを伺っているのだ。その証拠に小切手を受け取ってみると、自分のためには1ドルも使わず、すべて周りの人へのプレゼントに使う。そんな彼の行動を見て恋人が、若者にチャンスを、と懇願する場面が秀逸で、直前に登場する黒猫を使った伏線はエンドマーク間際に回収されて、数秒黒猫がまた映って終わる、という短さがスタージェスの粋を感じさせた。
 
 
そしてこれはクリスマス映画ではない。冒頭の場面でヒロインは半袖を着ているし、男の帽子もストロー素材だから、タイトル通り7月の物語なのだろう。タイトルは大金を手にした男が近所の子供たちに向けて大量に買ったプレゼントに埋もれながら、7月のクリスマスね、とヒロインが言うセリフに因んでいる。誰かが誰かを思ってたくさんの贈り物を用意する時、それは「クリスマスみたい」と形容されるのだ。ママに送った198ドルのスイッチひとつでベッドになるソファ(スイッチはNIGHT/DAYの2種類)、朝になってベッドを再びソファにする前、はたはた波打って湿気を飛ばしてくれる機能が便利そうだった…!