CINEMA STUDIO28

2016-09-18

猿沢池畔



オープニングの続きを書きたいのだけど、長くなりそうなので後日にまわすとして、なら国際映画祭2日目。


冷静にプログラムを眺めると、想像以上に規模の大きな映画祭で、コンペも気になるのだけど、同時進行している別のプログラムも気になる…しばし考え、今日は学生映画とカンヌ短編特集に絞る。


映画祭でハシゴして観る時の常として、映画と映画の間に手持ち無沙汰な時間が生まれがち、ということがあって、喫茶店を探して入るほどの時間でもないけど、ちょっと気分転換もしたい。と、ふらふら歩いていると、そこは猿沢池畔。同じ時期に音楽のイベントも奈良で開催されているようで、小さなライブ会場の前にあるデイリーヤマザキの店先でドリップコーヒーが売られていたので買う。コーヒーを手に池の周りをちょっと歩き、ベンチが見えたので座る。


ぼんやり、ずずずず…とコーヒーを啜りながら、景色を目に馴染ませていると、ちょっと動くと興福寺の五重塔が見えて、柳の木と映画祭ののぼりが同時に視界に入り、もう…奈良!としか言えない景色が眼前にあって、ちょっとした隙間時間にこんな場所にいられるなんて、100円で最高の喫茶店にいるみたい、と思う。


奈良市は映画館が閉館し、県庁所在地なのに映画館が1館もない、全国的にも珍しい状況に陥っているのだという。小さい頃に両親と行った映画館ももはや存在しない。県庁所在地に映画館のない唯一の県という説と、いやいや山口市もないよという説もある。どちらにしろ残念な現状で、なら国際映画祭は映画祭期間以外にも定期的にシネマテークとして様々な場所で映画をかける試みを続けているようなのだけど、映画祭が始まってみて考えることに、映画を普段、見慣れていない人々だから、わかりやすい話題の映画を、ということではなく、何本か観てみるとずいぶん攻めのラインナップ、東京国際映画祭やフィルメックスに映画環境的に恵まれた東京の映画好きが滅多にかからない珍しい映画を観に行くような、そんなラインナップと並べても遜色ない、いかにも観客を選びそうな癖のあるラインナップであることに、私は静かに感動している。動員にどう影響するのかはわからないけど、今日観た学生映画も、カンヌ短編特集も、老若男女の観客でほぼ満席だったことも素晴らしい。


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