CINEMA STUDIO28

2016-10-31

プラスワントーク2016



ハロウィン。去年、映画祭に向かうためただ歩いてるだけなのに狂騒に遭遇し「天井桟敷の人々」のラストシーンのバティストみたいな気分(細かすぎて伝わらない比喩シリーズ)になったので、昨日、日曜だし、さぞかし…と、メトロが六本木に滑り込む前から心を整えていたのだけど、拍子抜けするほど静かだった。何があったの。ハロウィンに異変が。


ホン・サンスの上映会場でお友達に会ったので、次の上映開始までヒルズのカフェで喋ったのだけど、オーダーに並んでいたら、前にいた男性がハロウィン仕様のケーキを注文していた。ギョロッとした目玉が3つ横に並んだケーキ。目玉、何でできてるんだろう…と、ぼんやり眺めていたら、店員さんが男性に「目玉が落ちやすいので、写真を撮る時はセロファンを剥がす前にお願いします」と滑らかにプラスワントークしていて、!!!!!!!SNSも普及して久しい、これが2016年のプラスワントーク!!!!!「ご一緒にポテトはいかがですか?」なんて旧時代のプラスワントークなのだね。新しい日本語に出会った気分で、静かに興奮…。


映画祭、何が楽しいって上映後のQ&A。昨日コンペで観た2本のアフタートークはどれも内容を補完して、新たな発見もあって素晴らしかったな。AがあるということはQが客席からあるということで、時間が重なって行けなかった「鳥類学者」のQ&Aで、ギョッとする質問があった、と耳にしたのだけど、それに対する司会の矢田部プログラミングディレクターの日記の文章が素晴らしかったのでメモしておきたい。彼の選択眼の素晴らしさを信頼しており、Q&Aで司会されることも含め東京国際映画祭を毎年とても楽しみにしている。映画自体も、作る人も、観客も、誰も断罪しない。紹介する側の姿勢として見事だと思う。



http://www.cinemacafe.net/article/2016/10/31/44545.html


「彼の生活圏で彼が接する表現活動が、あまりに怠惰であり、あまりに無味無臭であり、あまりに保守的であるということにほかならない。僕は、それが日本の一般的な状況なのだと思う。」という箇所は、ん?そうかな?と思ったけれど(勢いで手を挙げたけど、咄嗟に言葉を選べなかった、ということもあるかな…と)。


そしてアダム・レオン監督についての「感じのいいアメリカ人は世界一感じがいい」という印象は私が抱いた印象そのものだったので、あの幸せなQ&Aを思い返して、うっとり。ああ、映画祭って、本当に楽しいものですね…!

2016-10-30

TIFF2016 / 走り書きメモ3



東京国際映画祭、今日は午後から3本、頑張って観る日で、ただいま2本観終わり、3本目の開始を待っているところ。開始前はチケット騒動でゴタゴタしたものの、始まってみるとやっぱりどの映画も素晴らしくて、面倒がらずにチケット買って良かった…としみじみ。


1本目は待望のホン・サンス!多作な人…と思うけれど、男と女と酒…歌謡曲のタイトルみたい…があれば映画が1本撮れてしまう人だものね。いつも同じような素材を使いながら、しかし味付けは新作のたびに深みが増しているように思うので、配給の声が聞こえてこないのがつくづく残念…。映画館でまた観たいし、DVDでも何度でも観たい。


「あなた自身とあなたのこと」、信じる信じないという話としては「怒り」を思い出したりもしたのだけど、それを描くのであれば、「怒り」のような重量級の映画ではなく、ホン・サンスの軽さとわからなさのほうが、私好みであることよ。

http://2016.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=165

2016-10-29

廃墟劇場



先日、恵比寿で。写真美術館のリニューアル記念として杉本博司が展示しており、そちらはまだ未見だけど、敷地内のガーデンシネマで「羅生門」の上映があった。


展示はこちら。11/13まで(メモ)。


https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-2565.html


劇場シリーズは何作かこれまで観たことがあって、今回は「廃虚劇場」という新シリーズを発表とのこと。引用すると、



「本展覧会で世界初公開となる写真作品<廃墟劇場>を発表します。これは1970年代から制作している<劇場>が発展した新シリーズです。経済のダメージ、映画鑑賞環境の激変などから廃墟と化したアメリカ各地の劇場で、作家自らスクリーンを張り直して映画を投影し、上映一本分の光量で長時間露光した作品です。8×10大型カメラと精度の高いプリント技術によって、朽ち果てていく華やかな室内装飾の隅々までが目前に迫り、この空間が経てきた歴史が密度の高い静謐な時となって甦ります。鮮烈なまでに白く輝くスクリーンは、実は無数の物語の集積であり、写真は時間と光による記録物であるということを改めて気づかせてくれるこれらの作品によって、私たちの意識は文明や歴史の枠組みを超え、時間という概念そのものへと導かれます。」


以前、「映画館と観客の文化史」(加藤幹郎著)を読んだ時、こんな文章があって、



「映画とは、現像された上映用プリントそのもののことではないし、ましてその先行形態であるネガや撮影されるまえのセットや被写体の総体のことでもなく、上映用プリントが薄暗がりのなかで映写機にかけられてスクリーンに投影されたり、その動画像/音響情報が電子情報に転写されたりしてはじめて可能になるものだからである。しかもそれは絵画や写真のように、それじたいとしては鑑賞所有することはできず(それはヴィデオ・テープやDVDといったフィルム以外の媒体に変換された場合でも同じことであり)、映画はあくまでも物理的に触知不可能な映像(と音響)の時間的経験としてしか立ち現れない。」「それゆえ映画館(上映装置)が論じられねばならないのは、映画が立ち現れる場所以外に映画に訪ねるべき起源がないからである。」


この本は、この切り口から映画館と観客の歴史を語るもので面白い。そしてそもそも映画って何なのだろうか、と考える時に、杉本博司の「劇場」シリーズは、一つの答えであるな、と思っていた。区切られた時間、暗闇で物語つきの光を観ること。それは数千、数万の連続する写真でもあること。


上映前に杉本博司さんが登壇され、「廃虚劇場」シリーズについてお話をされた。アメリカにお住まいで映像の仕事をしている杉本さんの長男の方が撮った映像つき。


長く「劇場」シリーズを撮り、通常の映画館以外にもドライヴインシアターなど、様々な形態の映画館をひととおり撮ったため、新たなシリーズを考案した。廃虚劇場はアメリカ中西部、デトロイトやシカゴに多く、治安の悪い場所も多い。廃業後、数十年も放置され文字通り廃虚化しており、シートが見る影もなく溶けて床に落ちていたり(シートって溶けるんだね…!合皮だから?)、屋根が朽ちてヘルメットなしで歩けなかったり、撮影は危険と隣り合わせ。スクリーンがない劇場もあり、そのような場所ではスクリーンを自ら設置するところから始める。1点、作品撮りに行ったゲーリーという街は治安の悪さで全米ナンバーワンの街で、事前に撮影中の警護を警察にお願いしていたが、撮影が近づくと連絡がとれなくなり、聞けば担当の警察官が麻薬取引でパクられたり…と、作品自体もドラマティックながらその裏側のエピソードは作品以上にドラマティック。エピソードも含めて書籍化してほしいな、アメリカの映画産業の栄光と衰退についての素晴らしい記録になりそう。


上映する映画(おそらくフィルム)は複数のタイトルを持って行き、その場でかける映画を決めるそうで、この写真はボストンのフランクリン・パーク・シアター。撮影の日は雨が降っており、外が雨ということは、屋根の朽ちた廃虚劇場の中も雨で、雨のシーンから始まる「羅生門」を選んだ、とのこと。


展示を未見なので、「廃虚劇場」シリーズも未見なのだけど、トークを聞いて、灯りが消えて、始まった「羅生門」が滅法面白くトークの記憶を強烈に上書きしていった。映画とは…をコンセプチュアルに表現した写真より、映画そのものが面白いってなんだか健全な気もする。素晴らしかったよ、「羅生門」の物語成分を含んだ光!

2016-10-28

2016/10/28



突然、冬のような東京。…毛布…湯たんぽ…ゴソゴソ…。


そんな冬の東京に朗報。濱口監督特集、12月!今日ふっと「親密さ」の手紙の場面が過って、あの映画、脚本ってどこかで読めないのかな、と思っていたところ。手紙の文面を何度も読みたい。


https://hamaguchi.fictive.jp/


まだ開始日と上映館しか情報がないけど、かかるなら「PASSION」また観たい。「ハッピーアワー」も3度目を。もちろん他の、まだ観ぬ映画たちも。

2016-10-27

TIFF2016 / 走り書きメモ2



東京国際映画祭。昨日は別会場(EX THEATER)だったのでヒルズは通過せず。やっぱり東京タワーを左手に観ながら会場に向かう、この景色なしでは映画祭気分、盛り上がらないな。クレーンが写り込んでいるのが、あちこち工事中のオリンピック前の東京っぽい。






そしてポスターがたくさん貼られている一帯を抜ける。日本公開用のじゃなくて、本国オリジナルのものが多くて楽しい。この2本が並び!ホン・サンスにエドワード・ヤン…盆と正月がいっぺんに来たみたいな並びや…。左のほうは無事チケット確保したけど、右のほうは瞬殺で無理だった。来年のリヴァイヴァルを心待ちに。



映画祭ではなるべく、普段観る機会のない国の映画を観たいと思っており、今日はインドネシアの中篇2本立てを。


http://2016.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=323


http://2016.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=179


どんな映画を作るのか想像もできないような国の映画は、主に写真をチェックして決め、補助的にあらすじを読む。同じ国の映画だなぁ…と思う部分と、同じ国なのに…と思う部分があって、長篇1本を観るより、中篇2本というセット上映が有り難かった。特に「ディアナを見つめて」は女性監督で、ティーチインも興味深かったので、追って記録。

2016-10-26

TIFF2016 / 走り書きメモ1



わたくしの東京国際映画祭は今日から開幕。1本目はコンペから、中国・香港合作(中国と香港って合作って呼ぶんだね)の「シェッド・スキン・パパ」。ワールドプレミアとのこと。


http://2016.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=25



何と言ってもお目当ては、ルイス・クーとフランシス・ンが共演し、Q&Aに登壇すること!この映画の監督は違うけど、この2人は私にとってはジョニー・トー映画の常連俳優、よくお見かけする顔。



生ン(生のフランシス・ン)は日本の芸能界にも馴染みそうなルックスだったけど(赤いワンピースの女優さんの左が生ン)、生クー(生のルイス・クー)よ。そのスーツはどこの誰がデザインしたの。どこのブランドなの。袖のデザインもさることながら、そのパンツ丈は何。足元は白スニーカーなのだけどライトが当たるとギラッと光っていたので何かしらビジューがついているっぽい。こんなギラついた存在感の男、ジャニーズにもEXILEにも日本の芸能界のどこにもいない…香港スター独特のギラつきであった。初日から濃いものを摂取してしまった…ヨレヨレ…。

2016-10-25

2016/10/25



日曜午後の日本橋。あちらの橋は祭りで賑やか。橋口亮輔監督の「恋人たち」を思い出す眺めだったな。あの映画は好きじゃなかったけど。日比谷界隈の東宝でかからない映画は、六本木か新宿に行ってたけど、日本橋でかかるものはこれから日本橋で観ようと思う。観客層も大人で落ち着いてるし、映画館を出た瞬間の街の眺めも清々しくていい。


東京国際映画祭が開幕し、タイムラインが華やかな写真でいっぱい。メリル・ストリープが来ているみたい。私は明日から参加!


http://2016.tiff-jp.net/ja/

2016-10-24

2016/10/24



「七人の侍」、デジタルリマスタ効果を最も感じたのはお花畑の場面。花が星屑のようにキラキラしていて。恋愛担当・勝四郎の逢瀬も花に縁どられて。



ルビッチのサイレント時代の「思ひ出」の、この場面を観た時、あ、七人の侍!と思ったのだけど、黒澤明はこの映画を観ていたのかな。




背景に花を背負って似合う男・勝四郎。少女漫画に出てきそう…。だけどこの背景は案外誰にでも似合って、誰の魅力をも引き立てる実用的な背景であることに、



久蔵さまが佇んでいても、なかなか馴染んでいた。

2016-10-23

五郎兵衛!



書きたいことは山々あるのに、まとめてる余裕がなくて日記のタイトル考えるのも怠ける季節がやってきた。秋ですね。


朝10時から、「七人の侍」を観てきた。TOHOシネマズ日本橋は広めのスクリーン(6番)を準備してくれたけど、週末のチケットはあっという間に売り切れていた。


4Kデジタルリマスタされた「七人の侍」は、砂埃がさっとはらわれたようなフレッシュな映像になっており、そのことが作用したのかどうか、七人のうち、若手二人(ミフネと木村功)のキラキラ度が増し、二人が若気の至りということか、侍である前に僕だって人間だもんネ!と感情を露わにして仕事(野武士から百姓を守る)に良からぬ影響を及ぼすのを、志村喬をはじめとする五人の大人チームが老練な手さばきでフォローしチームとして目標達成せんとする、プロフェッショナル仕事の流儀っぽさを今日は感じた。



10代の頃に観た時は微塵も感じなかったことに、五郎兵衛(稲葉義男)、最高じゃないですか!七人の中で一番好きになった。有能だけどひけらかすことなく、飄々とリーダーをサポートする参謀役。派手な動きはなくても、この人がいればなんだか安定感増すね!と信頼されてるタイプ。「ご冗談を!」を筆頭に台詞もいちいち粋で、大人の男なのである。この魅力は小娘(=10代の自分)にはわかるまい。ああ、五郎兵衛の渋い活躍を最後まで追いかけたいから物語から退場しないで!と念を送りながら観ていたのだけど、願いは虚しく散った。



今日のところは、ひとまず以上。上映はしばらく続き、11/4(金)まで日本橋にて。チケット確保はお早めに。


http://asa10.eiga.com/2016/cinema/611.html

2016-10-22

memo : 羅生門



映画祭の時期とハロウィンが毎年重なり、重なるだけではどうってことないのだけど、映画祭会場が六本木なもので、ハロウィンの狂騒に巻き込まれ、「天井桟敷の人々」のラストのバティストのような気分を味わう。



永遠に自分は縁のないイベントだと思ってるけど、人生には何があるかわからないから、万一自分がコスプレするとしたら…「羅生門」のイタコがいい。検非違使のパートはどれも好きだけど、特にイタコのパートが視覚的に面白すぎる。棒の先に飾りがついた神具?を持って、儀式めいた動きを繰り返した後に、くるくるくると画面奥に回って下がって、ピタッと止まるあの動き、マスターしたい。細かすぎて誰にも伝わらなさそうだけど…。


今回観た羅生門についてのメモ。


・デジタルリマスタ効果なのか何なのか、ミフネの野生美が眩しく、私にしては珍しく森雅之があまり目に入らなかった。


・京マチ子のムチムチした肉感的なルックスは、映画にうまく作用する時としない時があると思うけど、「羅生門」は抜群にマッチしていて、飢えた獣(ミフネ)の前に、ポンと差し出される美味しそうな肉っぽさ、可愛いけど鶏ガラみたいな女優より、京マチ子こそ適役というもの。そりゃお腹空いてる時に、京マチ子が登場したら、ミフネも執着するってものよねぇ。


・ラヴェルの「ボレロ」のような音楽がずっと流れていて映画のリズムを作ってるのだけど、ミフネと森雅之のくんずほぐれつの決闘シーンではピタッと音が止んで、草木のワサワサ音、2人の息遣い、京マチ子の叫び声等が響く緩急の効いた音の設計が素晴らしい。


・どのショットもスタンダード画面にピタッと完璧におさまって、目が気持ち良いことこの上ない。特に、検非違使の場面(好きすぎて…)で、志村喬と千住実がマスコットキャラのようにいちいち右端に映ってるの、バランス面白くて最高。




・どんな映画についても言えることだけど、映画は映画館で観るものなのだなぁ。とりわけ黒澤映画については、映画館で観なければ別物になってしまう。10代の頃、大阪であった黒澤明特集に日参した時期があって、その頃にほとんど観たはずだけど、当時の自分が面白がったのは「隠し砦の三悪人」「蜘蛛巣城」「羅生門」あたりだった。いま観直したら、どれを面白がるのかな。

2016-10-21

2016/10/21



来週から映画祭。チケットシステムの派手なトラブルは解消した状態で買ったと思っているけど、いまいち信じきれもしない。購入した作品分のQRコードが届いたのできっと大丈夫と思いつつ、念のため紙でも出力して備えるなど。始まってからも会場で混乱はあるのだろうな。今年の鑑賞予定は去年の半分ほどなので体力を奪われすぎることはないけど、この週末は穏便に過ごし体力を温存しなければ。


そんなわけで、週末観る映画を1本に絞ることにして「何者」を観たかったけど、まだしばらく映画館にかかりそうだから、やっぱり「七人の侍」を観ることにしてチケット確保。


「羅生門」面白かったなぁぁ!の余韻は続いており、恵比寿では今日で終わってしまったけど、ギンレイホールのこちらの特集でもかかるみたい。料金も安い。


http://www.ginreihall.com/schedule/schedule_161022.html


私が観たのもこのデジタル完全版というバージョンなのだろうけど、ざらついたフィルムで観た時と比べて、半人半獣のようなミフネの野生美が際立っていたのが発見だった。デジタルリマスタ効果なのかどうかはわからない。

2016-10-20

2016/10/20



昼休み、15分ぐらいしかPCの前にいられない予定で、繋がらないまま時間切れしちゃいそう…と思っていたけど、予想外にサクサク繋がり、サクサク買えて、東京国際映画祭のチケット、無事に手に入れることができたっぽい。1作品につき複数の購入完了メールが届くという不審な動きはあったものの、購入番号は同じだから多重決済ではないらしい。真夜中にアナウンスが出ていたり、世を徹して作業した人々がいるのだろうな。今年も映画祭に行けて嬉しい。ありがとうございます。


時間勝負だったので、優先順位を整理して上から順番に抑えた。最初に買ったのはホン・サンス新作!去年の東京国際で観た「今は正しくあの時は間違い」も結局配給されていないし、映画祭で観るしかない監督になってしまったのだろうか…。



http://2016.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=165


今年は他の予定が立て込んでいるので、ぐっと絞って、とりあえず7本。追加購入するかどうか、二次発売まで考えようかな。

2016-10-19

Kurosawa!



映画祭はゴタゴタしてるけど(行ける気がしなくなってきた…)、東京の映画の秋は豪華に深まっており、リニューアルした写真美術館こけら落とし展示中の杉本博司さんが、劇場シリーズの新作として「廃墟劇場」というシリーズを撮り始め、本人が登壇してシリーズの説明、続いて被写体にもなった「羅生門」の上映があった。


お話の内容は後日メモするとして、「羅生門」、ものすごく久しぶりに観たし、映画館で観るのなんて10代の時以来ぶり?というブランクだったのだけど、本当に本当に面白く、神々しいものを見上げる気分を味わった。ミフネか森雅之か?という問いには常に森雅之でしょ?と答え続けてるけれども、「羅生門」においては、ミフネも森雅之も凌駕する京マチ子!京マチ子原理主義宣言!したくなるほど、京マチ子!が素晴らしい。



「羅生門」は金曜までかかってるみたい。恵比寿ガーデンシネマ。


http://www.unitedcinemas.jp/yebisu/film.php?movie=5616&from=film



午前10時の映画祭では「七人の侍」がかかってるのだよなぁ。観に行っちゃおうかなぁ。


http://asa10.eiga.com/2016/cinema/611.html

2016-10-18

日曜日、新文芸坐にて



映画祭はゴタゴタしているけど、映画の秋は確実に深まっており、あちこちで特集上映や豪華なゲストを招く企画があって目移り。日曜は、新文芸坐でこちらの特集を。牧瀬里穂主演の「ターン」と中村勘三郎・柄本明がやじきたを演じる「やじきた道中 てれすこ」の2本立て。「ターン」に中村勘太郎が出ていて、親子つながりの番組。


2本楽しく観ながらも、映画は正直どうでも良かったのだけど(すみません…)、この特集、ゲストが異例の豪華さで、日曜のトークゲストは監督、進行役に脚本家、そして小泉今日子さん…!キョンキョンが新文芸坐に?あの斜め向かいにド派手なヌード劇場のある新文芸坐?と、実物が登場するまで半信半疑。インパクトとしては去年の目黒シネマに宮沢りえさん、に匹敵するものがあった。そして本当に登場…わぁわぁ!


亡くなられた中村勘三郎さんの活き活きした弥次さんが映されており、映画が残されていくことの素晴らしさについてしんみりと語り、登場前に映写室からスクリーンをちらっと観て、弥次さんが亡くなった妻子と夢の中で再会する場面で感極まって泣いてしまった、と小泉さんは話していた。「やじきた道中 てれすこ」は川島雄三作品の録音も担当していた伝説の録音技師や、照明技師も日本映画界のレジェンドが集結しているそうで「とってもダンディでお洒落だった」と思い出話。「てれすこ」で幼くして親に女郎屋に売られ男を騙して脱出を試みる花魁の役を演じた小泉さんは、共演者の豪華さに緊張したけれど「ポップでいこう」と引き受けたとのこと。確かに、時代劇なのだけど、ハリウッド・クラシックのスクリューボールコメディのヒロインのような軽さがあって粋な女だった。押し掛けてきた男たちを前に啖呵を切る場面は富士山の麓で撮ったらしく、撮影中は、富士山をバックに啖呵を切る小泉今日子…!と現場は盛り上がったとか。これ撮ってる間、きっとすごく楽しかったんだろうなぁ…!という空気がそのまま真空パックされた映画だった。




私は文章を書く人としての小泉今日子さんのファンで、本も大切にしてる。かつての原宿を綴った「黄色いマンション 黒い猫」は、欲しいな…でも読んでない本たくさんあるし…と考えていたところ、打ち合わせに向かうため原宿の裏通りを歩いていたら、マンションの前に紐でくくられ捨てられていた本の一番上に、新品同然のこの本があって、!!!!!こんな、いかにもキョンキョンが昔住んでた黄色いマンションがありそうな場所で出会うなんて運命だ、遠慮なくいただきなさいってことだな!と、紐の隙間から本を抜き、紐を結び直してその場を去った。以来、うちの本棚にある。


艶のあるメイクに後ろでひとつにまとめた髪、ラインの綺麗な膝丈のベージュのワンピース、アクセサリーは繊細で、足元は黒エナメルにメタリックなヒールの15cmはあろうかというハイヒール。ふぁぁぁぁ!と、老若男女みんなが恋しちゃうような魅力がありつつも(新文芸坐の満席の観客はみんな目がハートマークだったはず)、飲み屋で隣あわせたら気さくに話を弾ませてくれそうな雰囲気もあり、装いはもちろん、声や話し方がとっても素敵だった。好きな人と手を繋いだ後は電車の吊り革触りたくないッ!気分のように、キョンキョンの声を耳いっぱいに貯めた私は、なるべく他の音をシャットアウトして、帰宅してしばらく著作をパラパラ読んだ。あの声で脳内再生しながら。

2016-10-17

2016/10/17



「永い言い訳」のパンフレット、DVDが付属する豪華さに加え、冊子部分も薄いながら内容が濃く、デザインも美しい。西川監督が今回初めてつけたという監督助手の書いたプロダクション・ノートが読むメイキングの役割を果たしており、2013年、監督が小説を書くことから今年4月初号試写まで、1本の映画が出来上がるまでの永い道程が淡々と綴られている。


銀座のapple storeであった西川監督とプロデューサー2名のトークイベントにも9月に行ったのだけど(質疑応答で不愉快な質問があって記憶が薄れていたけど、それ以外は充実の内容だった)、監督助手を初めてつけることについて、監督が一度OKを出したものに、監督助手が「あれはちょっと…」と意見を言う。意見を聞いて撮り直しをすると監督としてのリーダーシップが揺らぐことになるけれど、リーダーシップが揺らぐことよりも、映画のためになるかどうかを優先した、とおっしゃっていたのが印象的だった。


プロデューサーが隣にいることもあり、西川監督の印象は雇われ女社長と呼ぶのがしっくりくるような、大勢を統率するけれど、自分が完全にトップではない立ち位置の、しかし1日に何十、何百の細かい意思決定を重ねる人特有の凛とした強さもあって、素敵な女性だな、と思った。物を書く人というのは、「永い言い訳」の幸夫くんのように、どこかしら未成熟な部分をそのままに温存し、まるで自分だけが選ばれ獲得したかのごとくそれを宝物のように扱う、うじうじした自我を抱え続けている人々だと思っているのだけど、西川美和という女性は小説家としての自分と、監督としての自分をどのように1つの身体の中に同居させているのだろう。書かれたものや、撮られたものに触れる度にわからなくなる。



http://nagai-iiwake.com/

2016-10-16

Vincent Thomas bridge



春にいただいたLA土産の珈琲豆、あたたかい珈琲がしみじみ染みる季節が来るまで、と保管していたのだけど、そんな季節になってきた。


ROSE PARKの珈琲。
http://www.roseparkroasters.com/


LAに実在する橋の名前、Vincent Thomas bridgeというブレンドなのだけど、映画好きの友人曰く「これも映画に縁のある場所で、True Romanceの監督が飛び降りて自殺した橋」とのこと。へえ!と受け取りながら、トニー・スコットが亡くなってしまったことをようやく知った。ともあれ、とても美味しくいただいておりますよ!


東京国際映画祭のチケット問題、予想通り複雑なトラブルなようで、続報が出た。発売再開は10/20(木)正午に延期になった。


http://2016.tiff-jp.net/news/ja/?p=36908


嫌な予感がして手帳を見ると、来週最も慌ただしく、ランチとれるかな?と危ぶまれる日だった。今年はもう東京国際とは縁がないのだろうか。他のことを一生懸命片付けなさいという啓示のようにも思える…。けれども映画祭のスタッフの皆さんも、作品選定をされている方も、映画が好きで集まって、直前にこんな事態に見舞われるなんて、とても哀しい気持ちでいるでしょうね。といたたまれなくなって、縁があってチケットが取れたなら、例年通り存分に映画祭を楽しみますよ!

2016-10-15

難航



TOHOシネマズ日本橋、ロビーの窓からの眺め。日本らしい景色で良い。


計画ってだいたい計画通りに進まないもので、東京国際映画祭のチケット発売が大変なことに。


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161015-00000033-it_nlab-sci


確かにこれまで観に行ったどの回よりも酷い事態。これアクセス殺到じゃなくてシステム構築のミスだと思う。決済画面まで進みクレジットカード番号も入力した後に真っ白なページに飛んで何もできず、何時間も経って同じ席の予約メールが重複して何通も届く等、あれこれ起きているようだし。中途半端に決済されてしまっているから後対応の手段が分からなくて途方に暮れているのではないかしら。去年までのticket board、私は不満はなかったし、チケットレスだから便利だな、と思っていたのに、どうして変えちゃったんだろう。発売再開は月曜10時から。勤め人はどうすれば…。


http://2016.tiff-jp.net/news/ja/?p=36908



去年は10時発売だった記憶があるので、さすがに午前中あれば混み合っていても取れるでしょ、と、12時半頃からの「永い言い訳」の舞台挨拶つきチケットを買ってしまっていたので、12時発売に驚きつつ、PCでサクサク取れるように今日はPCを持ち歩き、TOHOシネマズのロビーで開いてみていたのだけど、一向に繋がらず、映画が始まり、映画が終わるとシステムメンテナンスに突入していた。もはや昨日の情熱は薄れ気味で、映画祭に行かない時間で別のことを進めようかな…と考えはじめているけど、運営に難はあれど、東京国際映画祭で映画を観ることを毎年秋の楽しみにしており、映画とそれを紹介する人々に罪はないので、どうしたものか明日いっぱい考えてみよう。


永らく楽しみにしていた「永い言い訳」、西川美和監督のこれまでの映画の中でも最も好きだった。感想はまだうまく出てこない。パンフレットがDVD付きで豪華なので、映画館に行かれた方は是非に。DVD楽しみだけどまだ観ていない。


http://natalie.mu/eiga/news/205455

2016-10-14

計画


東京国際映画祭、明日がチケット発売なので、サイトからスケジュールをプリントアウトし、計画を練る。どのあたりが争奪戦になりそうか予測もだいたいつくので(外れるかもだけど)、トライしてみてダメだったらこちら、と同時間に重なる上映に優先順位をつける。なけなしの段取り能力を掻き集めて総動員する年に1度の時間という感じ。今回から会場にEX THEATERが追加され、コンペは主にそこでかかるようなのだけど、メイン会場がそちらに移ったという理解で良いのだろうか。


http://2016.tiff-jp.net/news/ja/?p=36262


「ハッピーアワー」はオールナイトでかかるのね。ん?とよくよく観てみると「痛ましき謎への子守歌」というフィリピン映画、489分と書いてある。8時間超え!長尺の上には上がいるものである。

2016-10-13

brown fox all star



もちろん自分も履くし、履いている人を見るのも好きなので、出産のお祝いにはベビーサイズのCONVERSE ALL STARを贈ることが多く、世界のオールスター人口を増やす活動に勤しんでいる。洋服は贈る人が多いけど、案外、靴は盲点という説もあり、大人サイズの超縮小版だから一瞬でサイズアウトしても、こんな小さい足だった時期があるのだね!と後々までとっておいたり、という話も聞いたり。



今回も、どの色にしようかな…と、ベーシックなデザインのものをチェックしていたら、秋冬らしいもこもこデザインの新作が出ていた。これは…!




きつね!耳と尻尾もついてる…なんて可愛いオールスターなの…。友人は私にDVDを貸して布教してくれた「FANTASTIC MR.FOX」ファンなので…





きつね繋がり…!映画好きによるこじつけプレゼントとして、これにするかもしれない。ときめくけど自分では履けない無念を、生まれたばかりのお子に託しているだけかもしれないけれど。

2016-10-12

2016/10/12



本日の映画。ポスターに写っている俳優たちはもちろんのこと、写っていない俳優たちも隅々まで素晴らしい演技。佐久本宝という俳優の名前を覚えた。この映画がデビュー作なのか。まだwikipediaのページすらない。末恐ろしいな。


http://www.ikari-movie.com/

2016-10-11

2016/10/11



昨夜、7時間半喋って眠って起きて習慣として体重計に乗ったら、一気に1kg減ってたので、会話は運動、カロリー消費って案外そうなのかも。


引き続き「晩春」について、人の気配は残るけど、人は居ない日本の家の内部のショットは、黒沢清の映画みたい。



「晩春」はオリジナルではなく原作があるというのを知って、映画は原作に忠実なのか気になっていた。原作は広津和郎「父と娘」。



「野田(高悟)と小津はこの小説から、父親離れしようとしない娘の結婚問題を心配した父が、再婚すると偽って娘を無事に結婚させるというストーリー展開を借用して、脚色を進めた。しかし広津の小説では、嘘も方便が嘘から出た真となって、父親の再婚が現実になるという、ドンデン返し的結末に至るのだが、野田と小津はそのような機知的な運びを避け、あくまでも父と娘の関係に絞り込んで、ラストも父が孤独のままに取り残されることになる。従って人物の性格も環境の設定も、広津の小説とは全く異なったものになっているのは、当然であろう。」


手元にある「小津安二郎映画読本」(フィルムアート社)より。ほほう!脚色したことによって、嫁ぐ娘と残される父という、その後反復されるテーマが生まれたのが面白いな。「晩春」で笠智衆が元気良く再婚する流れは想像できないし、そんな結末ならこんなに長らく世界中で観られ続ける映画になっていなかったのかも。



私の記憶の中では、「晩春」は紀子が嫁いで音楽が流れて終わりだと思っていたのが、再見してみると嫁いだ後の残された笠智衆パートが案外長く続き、紀子の親友である月丘夢路が連れ添って飲む場面があったのが意外だったけど、ようやく嫁いだ紀子に比べ、月丘夢路は結婚して離婚したというスピーディーな展開を経験しており、その経験値を表現するためか、月丘夢路の衣装やメイクが紀子よりぐっと艶っぽく、同級生設定とは思えないほど、女と娘の境界線が二人の間にくっきり存在するように描かれていた。

2016-10-10

2016/10/10




昨夜観た「晩春」。紀子、こんなに快活だったのに…







こんなに豹変するなんて…



という話など、初対面の人と打ち合わせ7時間半(!)。体育の日なれど運動要素は皆無だったけど、会話も運動かしら。



水天宮にあるという喫茶店シェルブールに行ってみたい。傘屋の2階にあるんだって。

2016-10-09

紀子



6割ぐらいの集中力で、何年かぶりに小津の「晩春」を観ていたら、時折、集中がぐっと遠のいて音しか身体に届かない数分があり、音だけで眺める「晩春」はほとんどホラーの手触りだった。嫁ぐ日の原節子の暗い顔に覆い被さる不穏な音。「東京物語」や「麦秋」と違って、「晩春」になかなか手が伸びず、小津映画の中でも観た回数が少ないのは、ホラーを観る前のようなちょっとした心の準備を要求されるからだろうか。


紀子史上最も複雑な紀子を、原節子が完璧に演じていて、どういう演出をすれば、あんな紀子を存在させられるのか興味が湧く。

2016-10-08

長尺



この時期の連休…助かる!連休なれど映画館に行くのは一度のみ。何も考えずにいると毎日行ってしまいそうなのをぐっと堪え…しかしその1本は長尺!


さいたまトリエンナーレの企画、「ロングフィルムシアター」!その名の通り、長尺映画ばかりのラインナップを1日1本ずつ上映するユニークな企画。「ハッピーアワー」の情報を今も追いかけている中で知ったこの企画、「ハッピーアワー」は平日で無理だったけど(2度観たけど、もちろん3度目を観るつもりで機会を伺ってますとも)、「親密さ」は観られる!


https://saitamatriennale.jp/event/1608


夏、新文芸坐のオールナイトでかかったのを観に行き、しかし後半は眠ってしまったので、いつか昼間にかかる時にリベンジしたい、と狙っていたところ、案外早く機会が巡ってきた。首都圏の地理をいまいち理解していないので、埼玉?遠いね!ないない!と一瞬思ったものの、アクセスを調べてみると家から40分かからなかった…。蒲田より断然近い。時間でいえば渋谷と同じぐらいだけど、行ってみると心の距離感はやっぱり遠いものだな、と思ったのは県を跨いだからかしら。京浜東北線の路線距離の長さには毎度驚く。


2度目の「親密さ」、私が眠ってる間にこんな物語が展開していたんだな…と、ようやく物語の全容を知り、そして濱口映画をシネコンで観るというのが新鮮で、シネコンのふかふかの座席、きっちり段差のついた観やすい座席配置にうっとりしながら(私は名画座至上主義ではない)、長尺を堪能した。そのうちトライするかもしれないけど、濱口映画については、まだ何かを書ける気はしない。

2016-10-07

Y.K.について


帰宅したら川島雄三愛に溢れるあまり、髪型まで真似したという人から手紙が届いていた。ありがとうございます。私も「サヨナラだけが人生だ」、図書館で予約してみたよ(京都からの熱風に煽られながら)。



以下、川島雄三について。


・大阪ものではないけれど、my best Y.K.(Yuzo Kawashima)は「女は二度生まれる」。外国映画・日本映画取り混ぜたオールタイムベスト10に入るかも?というぐらい好き。きっと、一人の女性が男性遍歴を重ねながら変化していく物語が好きなのだと思う。溝口では「西鶴一代女」が一番好きだし、「河口」を珍品と言い棄てられないのも、そんな理由だろうか。いろんな人が撮ったそんな女たちの物語の中で「女は二度生まれる」は、若尾文子が徐々に身軽になって(身包み剥がされて)いくのがとりわけ素晴らしい。


・大阪ものではないけれど、「雁の寺」(京都もの)の舞台になったお寺(瑞春院)が相国寺の中にあるということ、偶然前を通りかかって知ったのは数年前。中学時代、生物の授業で植物の写生に行った界隈で、無邪気に絵を描く少女時代の私の傍で、あんな生臭い物語がッ!と、虚実入り混じった妄想を繰り広げた。


・大阪ものではないけれど、川島雄三って音楽の趣味がいいなぁといつも思っていて、何より、あっ!と思ったのは、「洲崎パラダイス・赤信号」の、これぞ見せ場という蕎麦屋での男女の再会の場面で、ラジオから不意に流れてくる音楽が♩かわいいかっわいい魚屋さん♩、あの場面に脳天気に流れる童謡を聴いた時、あたい、一生、雄三に着いて行くわ!と忠誠を誓ったものよ。さらに最高なことに蕎麦屋の娘が芦川いずみ…!音楽だけでなく、衣装(特に着物)の趣味もいい。監督もとってもお洒落な人だったのよね。


大阪ものの記憶が薄いから、観なければ。そして写真が内容に関係なさすぎる…と思ったけれど、フリーダ・カーロも川島雄三も病と共にあった短く太い人生…ということかな(こじつけ)。

2016-10-06

autumn schedule



京都の路地、気になる建物シリーズ。炭酸コーヒーとは何。


仕事帰り、虎ノ門病院に寄り赤ちゃんに会う。東京生まれがどうとか、という記事をしばらく前に読んだけど、こんな東京の中心も中心で生まれるなんて、彼女こそシティ・ガール。「寝台列車ってシャワーも時間式で10分、15分で入浴その後の全てを終えなきゃいけなくて、その経験が3時間おきの授乳の隙間に入浴するのに役立ってる。つまり鉄道好きは育児にも役立つ」との鉄道好きの友人の本日の主張であった。


帰り道、買い物のため有楽町まで歩くことにして、日比谷公園を抜けていると、薄暗がりに人だかりがあった。こんな時間に何かの行列?ライブ?その割に静かだし…と、近づいてみると、噂に聞く「都心の公園がポケモンGOをする大人たちでいっぱい」の光景…!初めて遭遇したので、これが噂の…!と静かに興奮。特筆すべきは、日比谷という場所柄もあってかみんな大人で、人の数が多いのにとっても静か、ということ。SF映画のシーンに紛れ込んだみたい。一昨日生まれたばかりのシティ・ガールが大きくなったら、あなたが生まれた頃、こういう光景を見てね…って話してみようかな。その頃には、何その前時代の遺物みたいなエピソード!という反応を呼ぶのだろうか。


そんな夜ではあるけれど、東京国際映画祭のスケジュールが発表された。新しい会場もあるので、どこで何を観るか慎重に決めなければ。


http://2016.tiff-jp.net/ja/schedule/index.php?day=25



フィルメックスのラインナップも発表された!気分の慌ただしい夜である。


http://filmex.net/2016/


タイペイ・ストーリーのリバイバルも楽しみながら、クロージングのこちらがとても面白そう。ジョニー・トーが絡んでる!


http://filmex.net/2016/program/specialscreenings/ss02

2016-10-05

2016/10/5



前を通りかかって、用はないけど中に入りたくてしょうがなかった場所。救世軍日曜学校。京都の細い路地。


友人に子供が誕生し(この日記で時々登場する鉄道好きの彼女である)、病院に顔を見に行く予定でいるので、面会時間など確認のためやりとりをしているのだけど、昨日子供を産んだばかりの人とは思えない普段通りっぷりで驚愕している。なにしろ彼女が自然分娩を選ぶ理由が「北斗晶が人生で痛かったことランキングの2位が出産らしくて(クワが頭に刺さって大流血、牛にアッパー喰らう等を押しのけて堂々の2位)そんなに痛いなら、自分だったら痛かったことランキング何位になるんだろ?って興味があって」とのことであった。妊娠中は世間の声に対する謎の反抗意識を燃やし、体を冷やすとダメとか何を食べちゃダメとか、あれやっちゃダメ諸説を片っ端から試してみてる、というよく分からない果敢な話を聞いていたので、無事に元気に生まれてきてよかったと思うと同時に、気をつけるに越したことはないだろうけど、身体や健康に関することってすべからく「ただし個人差はある」という言葉に集約されるね…長らく煙草を吸い運動らしい運動もせず91歳まで病気らしい病気にかからず生きた祖母を思い出しても、健康的な生活とは…と考えてみたり。


体調は大丈夫?と連絡してみたら、「怒り」が観たい…観たすぎる…と返事があって、産んだ次の日に映画の話をする人が初めてで新鮮すぎた。マイペース恐るべし。


私は来週、時間が取れれば観に行くつもり。
http://www.ikari-movie.com/

2016-10-04

reading…



最近また家で映画を観られない病を患っており、映画の秋だから、外でたくさん観ているから、ということなのかもしれない。移動中と隙間時間は主に読書しており、読了した文庫本をお気に入りのブックカバーから外し(友達からの誕生日プレゼントにブックカバーをリクエストした自分、偉かったね、とってもよく使ってる)、次に読む本を物色する時間も楽しみ。図書館派だけど、読むペースを強制されるのが辛いので文庫ぐらいは自分で買うことにして、見積もったものを書店で探すのだけど、だいたい書店になく、amazonで注文する流れが確立されてしまっている。書店がなくなると困るので書店で買いたいけど、痒いところに手が届く在庫ではないのがジレンマ。



カポーティーを書かれた順に読んでみる秋、というのはどうだろう?と考え、「真夏の航海」(Summer crossing)を受け取る。翻訳と表紙は安西水丸さん。終わったばかりの季節に逆行する物語だけど、初秋の東京は暑く、今朝なんて熱中症に要注意、とニュースを見て出かけたほどだから、今のところ違和感はない。



読み始めてふと、これは映画化されているのでは?と検索してみたら、スカーレット・ヨハンソンの監督デビュー作になる、という記事だけが出てきて、完成の報せはない。


http://eiga.com/news/20130518/5/


撮る予定だったけど、頓挫したのかな。撮るはずだった映画が頓挫する、というのもロマンティックで嫌いじゃないので(当事者は散々な気持ちだろうけど)、幻の主演女優は誰が似合うだろうな、と現代の女優を当てはめて妄想するのも楽しいし、書かれた40年代当時の女優リストからキャスティングするのも楽しい。

2016-10-03

充実



注文した「ディストラクション・ベイビーズ」のオフィシャルブックを受け取る。映画館でパンフレットとして売られているものと同一のはず。


期待していたシナリオは、セリフは少ないのだけど、ト書きが意外なほどびっしり書かれており、しっかりボリュームがある。読んでいるとスポーツの実況を文字で追ってるような気分に。キャスト4人のインタビュー、みんな言葉選びがしっかりしててクレバーだなぁ。菅田将暉くんのインタビューを、商店街の場面で彼が喋りすぎるのはアドリブだったのか…!と巧さに驚き、この映画を「アーティスティックで美しい映画」と語る素敵さ。その後に「暴力まみれですが、暴力を肯定しているわけではありません」と続けるバランスの良さ。


スタッフの方の対談も読み応えがあって、オール松山ロケで、現地の人々の協力を得て出来上がっていく様子が興味深い。助監督が「毎晩、客としてキャバクラなどの店に行って、女の子たちにビラを配ってラインを交換しました。お金はかかりましたが、撮影の時には彼女たちがフルセットアップで来てくれました」とか…!喧嘩のシーンは「ハードなので1日1戦にとどめたかったけど、日程的に昼と夜1戦ずつのダブルヘッダーになりました」とか…スポーツか!


今年は私にしてはパンフレットをよく買ってる年で、邦画が多く、それだけ豊作ということなのだろうけど、このオフィシャルブック、2016ベストパンフレットかも。800円で大充実。



http://www.akishobo.com/book/detail.html?id=772


そして帯にあったQRコード、ん?と見てみると、LINEスタンプがあるらしい。検索すると、



あった…!使ってみたいけど、LINE、コミュニケーションが簡単すぎて会話が永遠に終わらない感じが苦手で、そうならない可能性の高い場面(仕事とか)でしか使わないので、ディストラクションスタンプ、使う機会なさそう…。どやった?とか、柳楽くんの凄みごっこ、してみたいけど…。

2016-10-02

2016/10/2



秋の大掃除祭を開催するつもりが、掃除機が壊れるという事案発生。切り替えて上野公園まで散歩し美術館に入る。


撮影可能の展示が増えたのが喜ばしいことは否か熟考する必要はあるとして、スマホのシャッター音の合唱が静謐な鑑賞行為を妨げる事案についても検討の余地がある。鞄に入れたままにしていた、音のほとんど鳴らないカメラで子鹿を撮る。


http://90th.tobikan.jp/exhibition.html


他者のベストショットを邪魔しないようそそくさと移動しながら、一皿供される毎に写真を撮る人と食事するような、墨を飲むような気持ちを味わう。人の多い最終日に滑りこんだのがいけなかったのかしらん…。


昨日観た「ディストラクション・ベイビーズ」の余韻に絡め取られたまま、昨日の早稲田松竹は、映画の日(2本立て800円!)ということもあって朝から満席、帰り際もロビーがごった返しており、さっさと退出したのでチケットカウンター周りをのんびり見られなかったけど、パンフレットが豪華という情報を得て、どんなのだろう?と調べてみたら、オフィシャルブックが手頃な値段で発売されていたので、amazonで注文し、到着を待っているところ。


http://www.akishobo.com/book/detail.html?id=772


シナリオ採録が魅力的。大切にしているロメールのパンフレットも、ルビッチの昔の特集上映のパンフレットも、大切にしている理由の大半は、シナリオが採録されていること。しかし「ディストラクション・ベイビーズ」、とてもセリフの少ない映画だったから、シナリオも数ページなのかしら。セリフのどこがシナリオに書かれててどこがアドリブなのだろう…と思いながら観ていたので、再見する折には、シナリオと見比べてそのあたりを解明する、という使い途もある!

2016-10-01

ハイカロリー



今年は邦画の当たり年との声もあちこちから聞かれ、見逃していたのも、もれなく面白いのがすごい。邦画つまらないつまらないって言う人に、いや、あなたが観ていないインディーズに面白いのがゴロゴロあるんですよ…って言い続けてきたけど、そんな監督たちが商業映画に進出し始めたってことなのかも。


今日から早稲田松竹で始まったこちら2本、名画座2本だてで観た中で今年一番面白く、一番ハイカロリーな番組、ただし観る人を選ぶ。


私の中で「ディストラクション・ベイビーズ」に軍配が上がるのは描かれる暴力にわかりやすい動機がないからかな。最近、綺麗に物語を閉じようとしない映画をいくつか観て(どれも監督は若手、学生映画も…)新しい面白さをびしばし発見してる。


ディストラクション…の小松菜奈ちゃん、2016悪女ランキング暫定1位。


金曜まで!


http://www.wasedashochiku.co.jp/lineup/nowshowing.html