CINEMA STUDIO28

2016-10-22

memo : 羅生門



映画祭の時期とハロウィンが毎年重なり、重なるだけではどうってことないのだけど、映画祭会場が六本木なもので、ハロウィンの狂騒に巻き込まれ、「天井桟敷の人々」のラストのバティストのような気分を味わう。



永遠に自分は縁のないイベントだと思ってるけど、人生には何があるかわからないから、万一自分がコスプレするとしたら…「羅生門」のイタコがいい。検非違使のパートはどれも好きだけど、特にイタコのパートが視覚的に面白すぎる。棒の先に飾りがついた神具?を持って、儀式めいた動きを繰り返した後に、くるくるくると画面奥に回って下がって、ピタッと止まるあの動き、マスターしたい。細かすぎて誰にも伝わらなさそうだけど…。


今回観た羅生門についてのメモ。


・デジタルリマスタ効果なのか何なのか、ミフネの野生美が眩しく、私にしては珍しく森雅之があまり目に入らなかった。


・京マチ子のムチムチした肉感的なルックスは、映画にうまく作用する時としない時があると思うけど、「羅生門」は抜群にマッチしていて、飢えた獣(ミフネ)の前に、ポンと差し出される美味しそうな肉っぽさ、可愛いけど鶏ガラみたいな女優より、京マチ子こそ適役というもの。そりゃお腹空いてる時に、京マチ子が登場したら、ミフネも執着するってものよねぇ。


・ラヴェルの「ボレロ」のような音楽がずっと流れていて映画のリズムを作ってるのだけど、ミフネと森雅之のくんずほぐれつの決闘シーンではピタッと音が止んで、草木のワサワサ音、2人の息遣い、京マチ子の叫び声等が響く緩急の効いた音の設計が素晴らしい。


・どのショットもスタンダード画面にピタッと完璧におさまって、目が気持ち良いことこの上ない。特に、検非違使の場面(好きすぎて…)で、志村喬と千住実がマスコットキャラのようにいちいち右端に映ってるの、バランス面白くて最高。




・どんな映画についても言えることだけど、映画は映画館で観るものなのだなぁ。とりわけ黒澤映画については、映画館で観なければ別物になってしまう。10代の頃、大阪であった黒澤明特集に日参した時期があって、その頃にほとんど観たはずだけど、当時の自分が面白がったのは「隠し砦の三悪人」「蜘蛛巣城」「羅生門」あたりだった。いま観直したら、どれを面白がるのかな。