CINEMA STUDIO28

2016-03-31

2016/3/31

 
 
予約したiPhoneを受け取った。週末のうちにSIMカウンターで手続きするつもり。身動きとれない時期は隙間にwebをチェックして普段あまりしない細々としたものの衝動買いをしたりするのだけど、今回はiPhoneと「四月物語」のパンフレットのみ。どちらも私にとって実用的な買い物。
 
 
パンフレット、今年買って良かったモノBest3に入るのではないかしらん。充実の内容すぎて映画を観るまでに読み終わらない。
 
 
思春期から20代のはじめ頃に夢中になって、その後、それが好きだったと考えることも照れて憚られる時期がきて、もうそんな自意識の葛藤なんてどうでもいい、と達観し始めた時、改めて新たな面白さに気づき興味が湧く対象って時々あって、岩井俊二ってそういう人かも。その他に太宰治、レオス・カラックスなどが同じカテゴリーに入る。「懐かしむ」という感情が欠落しているので、リアルタイムで観ていたあの頃の私は…というセピアな感情は付随せず、新作映画を面白がるように、ただ新しく興味が湧く。4月になったら新作を観る日にちを決めなければ。
 
 
写真は伊香保にあったかっこいい廃墟ビル。

 

2016-03-30

2016/3/30

 
 
普段より早起きして健康診断に。いくつかある提携機関から好きなところを選んで受診するシステムで、表参道の女性用クリニックにしてみた。医師、スタッフみんな女性で、女子校ってこんな感じなんだろうか…と共学育ちは妄想。診断が終わると食事チケットをいただいた。界隈にあるいくつかのレストランでランチが提供される。肉肉しいほうか菜菜しいほう(そんな言葉はない)で迷いつつ、菜菜しいほうを選択し、表参道ヒルズのお店へ。ずっと机にかじりつきの五臓六腑に染み渡る、うるわしき薄味で蘇生。関東にあって薄味かつ美味しいレストランは思わず心にメモ。
 
 
クリニックの待ち時間に「キャロル」読了。感想は後ほど。図書館の開いている時間に帰れたのが嬉しくて本をピックアップ。「永い言い訳」、秋公開の映画も楽しみ。このキャスティングを脳内で動かしながら読むことになりそう。
 

 

2016-03-29

2016/3/29

 
 
昨夜、頭が働かなくなり、このまま続けても間違うだけだと判断したので「追加の資料は明日(3/21)送ります」とメールしてぱたっとPCを閉じて帰ったのだけど、明日は3/29だったし1週間どころか8日もずれてて昨夜の自分、まったく信用できない。
 
 
電車の中でiPhoneを見ることを禁じて以来、読書が捗っている。友達が贈ってくれたブックカバーも手に馴染んできた。先週は物語を読む余裕がなく中断していた「キャロル」の原作に復帰。あと少しで読み終わる。帰りの電車でキャロルの長い手紙を読んだ。
 
 
アメリカの街の位置関係に詳しくないので、手紙をやりとりするキャロルとテレーズがどれほどの距離離れているのかわからないけど、同じ国でも時差が1時間ある距離にいて、他に手段を奪われたためほとんど毎日手紙を書きあう。緊急時は電報で。苛立ちながら慌てて書いたキャロルの文字が「筆記体のわっかの部分はぞんざいに書きなぐられ、”t”の横棒が単語全体に伸びていた」という描写があり、アルファベットの国では書きなぐった文字はこのように形容されるのだな、と思った。
 
 
物語が書かれた時代には他の手段がなかったとはいえ、書かれた気持ちが何日もかけて届いたり、初めて手紙を出すために相手の雰囲気にあわせて慎重にカードを選んだり、投函する前にポストの前で躊躇ったり、手紙を介してゆっくり2人の距離が近づいて変化していく過程を堪能している。明日の往復で読み終わるかな。私はとても読むのが遅い。1冊読み終わるのにずいぶん時間がかかる。

 

2016-03-28

2016/3/28





余裕で21時までには終わらせる予定だったのに、予期せぬトラブルにより長い待ち時間が発生し、頭の休憩がてらこれを書きつつ、終電の時間など調べる。まだ月曜か。3月も終わりに近づき、もう1年も4分の1過ぎた、早いね。と普段なら思うものを、今年は何故か、もう半年は過ぎた感覚で、お正月なんて思い出せないほど遠く感じる。肌寒くてまだ冬物をしまいきれずにいるのに。



年末に買ったプロジェクター一式は、ここ5年で一番いい買い物だったかもしれない。映画館が遠くなるこんな時期でも、それなりの環境で映画を観られるから。



昨夜観た「ローリング」、観終わった後は、笑いのツボのことごとく合わない男の人と差し向かいで食事した時の気まずさに似た気持ち、ニコニコ笑って受け流してしまったばかりに噛み合わないまま何時間も逃げられずに経過してしまったような気持ちになったけど、今日何度もあの映画を思い出している不思議。



水戸を舞台にした映画で、一度だけ行ったことのある水戸、中心部で半日だけ過ごし、私が歩いたエリアもちらりと映っていた。繁華街はほんの少しで、少し移動するとすぐ何もない風景が連なる、きっとそんな地方都市にありがちな街だったのだろうけど、何もない風景には用はなく、私の用のなかった場所でだけ物語が展開していた。





見逃している映画は、たくさんあるのだな。そして日本映画は意識して探さないと出会えないところにしか、面白い映画はないように思う。って、どこの映画でもそうか。

2016-03-27

2016/3/27

 
 
3時間かかるね!と見積もっていた休日仕事が1時間もかからずあっけなく終わり、銀座で軽く買い物していたら近所の友達から近所案内してほしいと連絡がきたので、よみせ通り、谷中銀座のどの店で何を買うべきか、肉はここ、魚はここ、と解説しながら夕焼けだんだんを上がり、この時期なので谷中霊園へ。界隈は桜の名所が多いけど、酒と縁日で浮かれすぎ情緒を壊しがちな上野公園より、谷中霊園が断然いい。墓地というロケーションが桜の木の下には何とやら、を思い出させる。夕暮れ時、まだ二分咲きほど。来週末は霊園も商店街も混むだろう。
 
 
 
 
よみせ通りのキッチンマロのウィンドウ、食欲をそそらない度ランキング上位に入る。ロースカツ、カツはまだなんとか、しかし付け合わせの野菜の質感を形容する言葉が見つからない。トマトなんて宇宙の食べ物みたい。
 
 
 
とんかつ屋や、とんかつの食品サンプルを観るたび、川島雄三「とんかつ大将」を未だ観ていないことを思い出すので、次のタイミングで必ずつかまえて、頭の中の課題をクリアにしなければ。
 
 
散歩後、帰宅して予定どおり「ローリング」を観た。

2016-03-26

ted2

 
 
眠りは何故か浅かったものの、ちゃんと食べたり身体を動かしたりして乱れた心身整え、「ted2」を観た。狙い通り何も考えずケタケタ笑える映画で、1も卑猥かつ下品で初々しいデートに向かない映画と言われてたけど、2を先に観た友達から、2はさらにデートで観ちゃダメ度が増してると聞いていたのだけど…そうかな?もっとデートに向かない映画いっぱいあると思うけど。「SHOAH」とか。映画やテレビ番組など固有名詞がじゃんじゃん出てくるのでアメリカ文化に詳しい人なら私よりもっと楽しめるだろう。21世紀も16年も過ぎたというのに同性婚、働く女の出産問題などピントのずれまくったおじさん政治家による議論が遅々として進まない日本でこれを観ると、人間女性とtedの結婚式で始まり、子供が欲しくなったことから持ち上がるtedは人間か?所有物か?問題は裁判になだれこみ、奴隷問題の歴史など織り込んだ弁論で着地する見事さにただのアホ映画ではない…いや、アホ映画なんだけども…と少し神妙な気持ちになった。
 
 
とはいえ、とりわけ良かったのはオープニング!
 
 
tedの結婚式でのダンスから滑らかに繋がるオープニング、30年代ミュージカル風。オールドハリウッドに目配せの効いたクラシカルな仕上がり。オープニングのメイキングが映像特典としてついていて、本篇よりそちらに見入った。振付はバズビー・バークレー・スタイルを踏襲し、撮影も30年代に建てられたフォックスのスタジオで。ジーン・ケリーが監督した「ハロー・ドーリー!」も同じスタジオで生まれたらしい。100人ほどのダンサーがウェディングケーキやピアノの鍵盤の上で踊り、男性はフレッド・アステア風タキシード、その間をtedが踊りながらすり抜けていく映像を作るために、tedの動きを担うダンサーにモーションキャプチャー用スーツを着せて撮影しながら同時に映像ソフトでダンサーの骨格の動きを採取し、同時にアニメーションのtedの動きと同期させていく…という手法で製作したという説明が面白すぎて、その骨格の動きを採取できるソフト、欲しい!
 
 
はー!映画を観られるお休みは尊いなぁ!明日は残念ながら出社予定だけど、早く終わらせてもう1本借りてる「ローリング」、観られるかな。

 

2016-03-25

2016/3/25

 
 
繁忙期の最初の山をひとまず越え、黙々準備したことを他の人と組んで形にするにあたり、連携も滑らか、昨日iPhoneケースであればいいのに、と書いた「フォースの覚醒」のBB-8とR2D2が協力してスカイウォーカーの地図を完成させた瞬間のようなピカッとした達成感。まだまだ続くけど、ひとまず13連勤は回避できたので明日は目が覚めるまで眠る(当たり前)!
 
 
映画館に行く体力はなさそうなので、「なにひとつ頭を使わず、笑って観られそうなもの」をテーマに借りた「ted2」を家のスクリーンで観るつもり。ぴったりの選択だな。1は映画館に観に行きました。Bon week-end!!

 

2016-03-24

2016/3/24




iPhoneSEを無事予約。これまでapple製品はすべて白だったけど、今回はじめて黒に手を出した。スペースグレイ....スペース?...は!宇宙!宇宙の漆黒!(しかし名前はグレイ)と最後は名前が後押し。単純。


2年以上使って死に体のiPhone5には1年以上、TARSのケースをつけている。「インターステラー」の、宇宙で頑張るロボット。写真右の鉛色の板状の彼。






使ってるのは確かこれの色違いだったかな。もうちょっと青&黒っぽい。そして私によって酷使されたTARSは宇宙から帰還したかのようにボロボロなのがまた可愛い。しかし人前に出すのが憚られるほどボロボロなので、いい大人としてはここはケースも買い替えねばと思ってリサーチ中。







次はこのドロイドたちのにしようっと。「フォースの覚醒」の私的ハイライトシーン、スカイウォーカーの地図を完成させるBB-8とR2D2のシーンのデザインがあればいのに。検索するとR2D2&3-CPOか、それにBB-8を加えた勢揃い版のデザインが出てくるのだけど、BB-8とR2D2が並んだ時の、お腹まわりがずんぐりしたペンギンぽさが好きで、申し訳ないけど3-CPOはそれほど好きじゃないから(お腹もスリムだし)、邪魔しないでほしいの。宇宙SFドロイド系ケース、スペースグレイの名に添った検討である。早く手元に届かないかな。

2016-03-23

2016/3/23

 
 
明日は新しいiPhoneを予約しなければ。キャリアメールが使えなくなるので、あのアドレスでやりとりしてる人に連絡しなきゃ、と数えてみたら、もはや数少なく、母と、もう1人と、早稲田松竹のメルマガだけだった。混雑状況を教えてくれるのが便利で、何年も前に登録したっけ。解除しなきゃ…と思った矢先に早稲田松竹からメールが届き、スマホの普及でメルマガの意義も薄れてきたので配信停止するというお知らせだった。タイムリー。ささやかなことでも時は流れるのだなぁ。
 
 
早稲田松竹、パンフレット販売の有無をきっちりサイトに載せるのは、問い合わせが多いのかしら。「四月物語」、パンフレット販売なし。ずいぶん前の映画だから当たり前ね、と思ったついでに「四月物語」のパンフレットってどんなのだったのだろう、とふと思った。封切り当時に映画館で観なかったのは海外にいたからで、あの映画がどのように紹介されたのか知らない。「四月物語 パンフレット」で検索してみると…意表を突かれるルックスだったので、思わず完全な状態と思われるものを注文。手元に届いたらパンフレット読んで、早稲田松竹に行こう。

 

2016-03-22

2016/3/22

 
 
仕事が落ち着いたらね、の枕詞のつく約束ばかり積もっていく。岩井俊二の新作、どうかな?3時間もあるんだって。ユーロスペースでかかるのが意外、最後に観た岩井俊二、何だっけ…「花とアリス」?などやりとりし、たぶん観に行くだろう、仕事が落ち着いたらね。
 
 
暖かかった土曜の昼間、家からオフィスへの道のりは地上を歩く時間合計3分なので、コートも羽織らず、素足にバレエシューズですたすたと向かったら、冬じゅうタイツやソックスの庇護のもと眠っていた足の甲が、準備不足の照れくささと、冬眠から目覚めた悦びの中間の気配を漂わせており、「四月物語」を思い出した。
 
 
大学入学のため上京し、ひとりで新しい街に暮らし始めた主人公は、春の夜、ワンピースで自転車に乗って映画館に向かう。スカートと靴の間の露出した脚が、はじめての一人暮らしの開放感と、ぴりっと肌を刺す花冷えの夜の入り混じった気配を漂わせて。ささやかな四月を詰め合わせた「四月物語」、岩井俊二の映画で一番好き。
 
 
あの映画、確か、映画館で観たことなかったはず。と考えていたら、新作公開記念に早稲田松竹でかかる3本立てにラインナップされていた。35㎜。春の夜、ラスト1本で観たい。

 

2016-03-21

鋪道の囁き




ああ、映画館に行きたい・・・。休日仕事の息抜きに書いてる。シネマヴェーラでのミュージカル特集、どれもスクリーンで観たいものばかりだったけど時間を捻出できず「鋪道の囁き」1本にしぼって観た。



ヴェーラのサイトから。


「アメリカの音楽ダンス映画の日本版を目指して加賀四朗が独立プロで製作した意欲作。アメリカで修行して帰国後のダンサー中川三郎と、来日した日系二世ジャズ歌手ベティ稲田のコンビを主役に、ダンスホールでのオーディション場面などを通じて2人のタップ・ダンスとバンドのジャズ演奏を見せる。戦前殆ど唯一の本格的なアメリカ流音楽ダンス映画。」



集中力不足か、映画的説明の不足か、アメリカ帰りの歌手が何故、興行を嫌がって身一つで家出のように飛び出していくのか、肝心なところを掴めなかったのだけど、この映画が目指すアメリカ流音楽ダンス映画を観た経験値から、そんなのどうだっていいじゃないか、わからなくてもそのうち辻褄あうだろうし、最後には音楽とダンスがあればオッケーという気分にさせてくれろうだろう、と眺めていると本当にそんなふうに終わった。



女が身一つで出ていく、逃げる、そんな映画が好きで、この映画もベティ稲田が身一つになってからが本番だった。文無しながらお腹は空いて、太陽軒ミルクホールという店に入り、軽食と珈琲を美味しそうに食べるのだけど、食べ終わると支払えずグズグズし、心ないウェイターに雨の中、投げ出される。罵り言葉が・・・「この西洋乞食!」だったので、びっくりして心にメモ。



「乞食」という罵り言葉に、罵りの意味はない「西洋」を加えるだけで、いきなり新語の発明。「泥棒」に、「猫」を加えた「泥棒猫」に似た響き・・・!聞き慣れない言葉を聞くと細胞が興奮する私はこの一言でぐっと引きずり込まれ、そして雨に濡れた歌手に手を差し伸べるダンサーの麗しさにさらに目が覚めた。ノーマークだった、中川三郎。本職はダンサー。明日にでもルビッチ映画に出演できそうなルックス、身のこなし、日本の30年代にもこんな俳優がいたのね。戦前の小津映画にルビッチの影響を感じられる映画は何本かあるけど、登場する俳優たちは中川三郎ほどの頭身や身のこなしは持ち合わせていなかった。









雨の中2人は警官に怪しまれ、夫婦のふりをして逃れ、「太陽アパート」という男のアパートへ。銀座一丁目だって。売れないダンサーなのにいいところに住んでるね!と思ったけど、絶賛家賃滞納中とのことで、納得。歌手にベッドを譲り、ダンサーはソファでという「ローマの休日」スタイルで眠るのだけど、外では洋装だったダンサーが、着替えた部屋着が和服というギャップにもう陥落しそう。ポマードで撫でつけた髪はそのままで眠ってたけど、起きると髪にべったり埃がついてるのではないかしら、と好きなタイプだとつい余計な妄想する癖を発揮。









ダンスホールでのオーディションを経てやがて彼らの芸に光が当たり、ダンサーを巡る恋模様も最後にはおさまるところにおさまってエンドマーク。最後のダンスシーンの衣裳、アステア&ロジャースに目配せが効いていたように思う。



この映画は加賀プロダクション第1作、プロデューサーの加賀四郎は加賀まりこさんのお父さん。上映後には加賀まりこさんのお兄さん・祥夫さんや、中川三郎さんの娘さん・弘子さんが登壇され、それぞれの父親が参加したこの映画についてトークがあった。当時ジャズは敵国音楽とみなされ、加賀四郎さんは押入れでレコードを聴いていたこと。タップダンスのステップがスパイの信号と見做され連行されるなど逆風の吹く中、映画は一度も上映されないままお蔵入りになっていたのが、何故かずっと後に唯一のプリントがUCLAで発見され日本に帰ってきたという。弘子さんはお父さんから、ダンスだけではなく演技もした、映画に出たと聞かされていたけど、実物が存在しないので嘘だと思っていたが、お父さんの存命中にフィルム発見が間に合い、一緒に観ることができたそう。当時、中川三郎は19歳(!)と若く、役柄にあわせて生え際の毛を抜くなど痛い思い出があったそう。あのポマードこってりの髪型にそんな秘密が・・。



「鋪道の囁き」が日の目を見ていたら、そして30年代でなければ、中川三郎主演のミュージカル映画がたくさん作られて、アステアのように語り継がれる映画スターになっていたかもしれない。遠い目でそんなことを考えつつ、ただの珍しいもの観たさだったけど、無事に観られてよかった。これから好きな俳優・日本人部門は川口浩ならびに「鋪道の囁き」の中川三郎の2名、ということで。タキシードに撫でつけた髪、身のこなしが綺麗な人は素敵。



略歴はこちらに。「ダンスは、音楽を通した、歩く会話である」

2016-03-20

Le procès de Jeanne d'Arc


 

ブレッソン映画はレンタルで出回ってるものが少ないように思うけど、近くの図書館に唯一あったタイトルが何故か「ジャンヌ・ダルク裁判」、未見だったので借りてみる。

 

 

冒頭の説明で、ジャンヌ・ダルクについて残された史料は少ないが、裁判記録は残されており、それに忠実に作られた映画とのこと。前後に何度も映画化された、物語に仕立てられた波乱の生涯を描くのではなく、裁判の場と地下牢を往復し、やがて火刑に処されるまでを淡々と描く、ブレッソンらしいストイックさ。歴史に疎い私は、63分という短さに助けられた。

 

 

裁判の内容は宗教問答に終始し、声が聞こえる、声に導かれたと主張するジャンヌは問い詰められる。頑なな表情から発される言葉の響きは、盲信が過ぎた女の狂言と、選ばれし者の証言の間を往復する。

 

 

女学生のように初々しい風貌の女優の着る飾りのない、布の分量の少ない上着、パンツ、ブーツが火刑の前に脱ぎ捨てられ、さらに簡素な円筒衣に着替えさせられ、はりつけにされたジャンヌが何故か最後に必要以上に女らしく見えたのは着るもののせいだろうか。

 
 
 

顔より先に手や足、足音が映し出されるブレッソンらしい映像。息の詰まる場面の隙間に、唐突に映し出される犬や鳥の動きが妙に目に残った。

 

2016-03-19

2016/3/19

 
 
連休だけど残念ながら休みは今日だけ。軽く運動して身体を整えた以外はひたすらだらだらと自分を甘やかした。友達が置いていった梅酒をセブンイレブンで買った炭酸で割って飲みながら、図書館でようやく順番がまわってきた「逢沢りく」を一気に読めて多幸感に満たされる。母と電話で話したり、甥や兄の奥さんとLINEでやりとりしたり(「ごめんやで〜」「せやねん」と、関西人同士のチャッのひらがな率の高さよ)の後に読んだので、「逢沢りく」、関西の家族のめんどくさくもいいところを余すところなく描いてくれてありがとう、と思いながら読了。
 
 
 
 
食卓でのたわいもないしょうもない会話が隅々まで拾われていたり、群像劇の映画を観てるみたい。病院で電話する男の子と、その脇での母親と女医との会話がひとコマに同時に入った後、カメラが動いてラストシーンになだれこみ、エンドロールが流れないのが不思議なほど、映画だった。
 
 
市川準監督が亡くならなければ、大阪に憧れがあったらしい監督なら、うまく映画にしてくれたかもね。とびきりの美少女をキャスティングして。

 

2016-03-18

Cinema memo : 台湾巨匠傑作選

 
 
労働に勤しむ春のはじめ、近所のスーパーの閉店する22時に間に合わず足が遠のき、その先のセブンイレブンに寄るのが唯一の楽しみ…という地味な日々を送るのが例年の恒例だけど、今年は異変が起きている。セブンイレブンはじめ、八百屋、モスバーガー、近所の店が軒並み改装中で復活するのは4月というのだ。改装計画を1年ずつずらすなど近隣住民にどうか配慮を…と思ったけど、化粧品ってなぜ同時になくなるのでしょう、電化製品ってなぜ同時に壊れるのでしょう、の大規模バージョンなのだきっと。この界隈の地盤が改装期を同時にもたらしたのだ。と思い至る。今日はひとつ手前の駅で降り、途中にある別のセブンイレブンに寄って炭酸水とパピコ片手に一駅分ぶらぶら歩いて帰宅。私は今、この上なくセブンイレブンに執着している。
 
 
4月の終わりから始まる台湾巨匠傑作選、去年フィルメックスの後半戦、労働に勤しむため見逃した蔡明亮など観たいなぁ…とチェックしていたら、最後に侯孝賢とエドワード・ヤンを撮ったテレビドキュメンタリーをラインナップに発見。是枝監督によるものらしい。観たことないし、何か別の映画を観れば無料で観られるようだから予定しておかなくっちゃ。
 

 

2016-03-17

2016/3/17


 
 
タイの映画監督の、まだ観ていない映画を大阪まで観に行こうかと考えて断念したけど、記事があがっていたのをクリップして、さっきようやく読んだ。
 

http://cinematoday.jp/page/N0081105?__ct_ref=https%3A%2F%2Ft.co%2FGbtyReZpvw

 

ナワポン監督、映画祭で2度Q&Aで話を聞いているのだけど、タイの映画マーケット、観客たちについて、自分の国の映画が国際映画祭で受賞したら日本では興味を持って映画館に観に行く人が増えると思いますが、タイの観客はむしろ腰が引けてしまう。映画祭で受賞するような難しい映画なのか…!って。と話していたのを思い出す。

 

 

映画研究家が、ゴダールのジャンプ・ショットを観る手段がないから資料を読みながら妄想を膨らませてた…というのも他人事とは思えない。私も物心ついて映画を自主的に漁って観るようになった頃、今に比べてあまりに、観たいものを観たい時に観られる手段が少なく、学校の図書館で「日本映画シナリオ大全」的な、誰も借りた形跡のない分厚い本を広げて、書かれたキャスト、スタッフの名前、セリフ、ト書き…とにかくシナリオから映画を…セット、衣装、女優は右から入ってきて…と妄想してたもの。Netflixのような便利なものが登場しても、観たい映画が観たい時に観られるなんて…そんなつまらないことってある?という違和感を拭えないのは、あの経験からだろうか。そしてこの妄想癖も…。

 

 

ナワポン監督も「あの店長」の店の常連だったとのことで、確かに監督の映画は日本映画の影響を強く感じるし、「36のシーン」が東京国際映画祭で上映された後、「この映画は僕からの、日本映画へのラブレター」と呟いているのを読み、なるほどね、と膝を打った。人は自分が観たものでできているのだな。たくさんの人が映ったこの記事の写真、右下のメガネ青年がナワポン監督。字幕もついたことだし、東京で上映してくれないかしら…。

 

2016-03-16

Seijun Suzuki retrospective

 
 
LA在住のリエさんが、鈴木清順特集に通われているのをinstagram(@riekoh)で興味深く読み、2007年、パリであった特集に通った時のパンフレットを引っ張り出してみた。映画監督の育った環境など調べるのが好きなのだけど、ルビッチがベルリンの仕立て屋の、鈴木清順が日本橋の呉服屋の息子、というのが2大お気に入り。
 
 
エッフェル塔の麓にある日本文化会館で開催され、日本で見逃した「オペレッタ狸御殿」を何故かパリで捕まえたことが面白かったり、何度観たかわからない「陽炎座」が異国で観たせいか必要以上に沁みて、熱に浮かされたようにそのまま1時間ほどセーヌ川の脇を歩いて家まで帰ったな。フランスの観客も多く、なんとなく大正浪漫三部作のような耽美な映画、口に合うのでは?と安直な想像をしていたけど、予想以上に途中退席が多くて意外だったな。
 
関東無宿!
 
 
生・清順監督は東京で2度。最初は「ピストルオペラ」封切りの舞台挨拶、シネクイントだったかな。その次はわりと最近、2011年だったか、シネマヴェーラでの特集上映で、宍戸錠さんとのトーク。酸素ボンベをつけた車椅子で登場され、お身体大丈夫かしら…とハラハラしたのだけど、トークが始まってみると江戸っ子っぷり全開。この日は宍戸錠さんの自宅が火事に遭ってニュースになった数日後で登壇自体が危ぶまれるような時期だったと思うのだけど、目の前のジョーさんはツヤッツヤで、監督とひたすらトボけたトークの応酬を繰り広げ、昭和のスターは肝の据わり方が違うわ…と感嘆。写真も撮ったはずだけど探し出せず、しかしあの楽しいトークを書き起こしてくださった方が!と思ったら日活のページだった。感謝!昔話をするために呼ばれたけど、しんみり話すなんてちゃんちゃら嫌だね!という2人のトーンが最高。
 
 
 
もうひとつ、山口小夜子さんとの対談がwebに掲載されているのが読み応えあったけど、探しても消えていた。いつまでも、あると思うなwebページ(教訓)。対談の中にあった清順監督の「愛」なんてものは嫌いだよ、そういうウジウジしたものは。という言葉が好きすぎて、読みたい気分の時、思い出して読んでいたのだけど。


室生犀星「蜜のあはれ」を、鈴木清順監督が映画化するという噂が何年か前に流れ、原作が大好きだからこの上ない組みあわせ!と高揚したのだけど、気がつけば石井岳龍監督でもうすぐ公開される。清順版、観てみたかったな。どうかお元気で長生きされますように…

 

2016-03-15

2016/3/15

 
 
別の映画のことを書くつもりだったけど長くなりそうでパス。書く心の余裕を消失中。
 
 
ジョニー・トーのbaike(百度百科=中国版wikiのようなもの)にここのところ頻繁にアクセスしてる日本人上位に入りそう。昨夜は「柔道龍虎榜」という映画を観はじめたら、オープニングが「七人の侍」オマージュの「ザ・ミッション」ばりに黒澤明オマージュ、そして柔道、ああ「姿三四郎」オマージュなのだなぁ…ジョニー・トーは本当に黒澤好きだね!と、思いつつそこで入眠。
 
 
そして郭富城に似てる俳優だなぁ…でも彼はもうちょっと年をとってるはずだから、似てる別の若い俳優に違いない、と思っていたら郭富城本人だった。2004年の映画だから40歳近いはずなのに20代前半の若造にしか見えない。ジョニー・トー・マジックなのか、私が眠くて見誤ったのか、香港スターすごい、燕の巣効果…?とか、もしかしたらその全部の要因かもしれない。郭富城、去年北京で観た新作映画でも瑞々しく美しかったから不老不死の人なのかもしれない。ずいぶん年上だったはずが、そのうち私は郭富城の年齢に追いつき、追い越し、郭富城より先に死ぬんだ、きっと。監督とタイトル程度の知識だけで何も調べず観ていると、スターが出てたのだね、知らなかったよ!ということがしょっちゅうあって、そして思いがけないスターの登場はやっぱり嬉しいものだな、と思う。眠くなるまで続きを観ようっと。

 

2016-03-14

神探 / MAD探偵

 
 
ジョニー・トー祭。これはワイ・カーファイ監督との共同監督。先週の1本「MAD探偵」。
 
 
短い映画だけど、筋書きを掴むのに時間がかかってしまい、冒頭を3回ほど見直して、主人公が神がかった能力を持つ探偵(元刑事)ながら精神を病んでおり、容疑者も性別も年齢も違う7人の別人格を抱える多重人格者という設定をようやく理解して続きに進んだらあれよあれよと最後まで。多重人格の7人分、1人の俳優が演じ分けるわけではなくて、ちゃんと7人別の俳優がキャスティングされてる。MAD探偵は他の人には見えないそれらの人格が見え、そして別れた元妻も別れる前のラブラブ状態で彼のそばにいたり、虚実が自在に入りみだれる複雑な構造。ジョニー・トーは普段、脚本を準備しないのが当たり前らしいのだけど、これだけ練られた物語だからさすがに今回はあるのかな、と思えば、やっぱりなかったらしい…。撮る側も撮られる側もよく混乱しなかったね…。
 
 
最初の数分で私が混乱して次に進めなかったのは、主人公が耳を自分で切り落とす場面があったからなのだけど、「ゴッホがもし、探偵だったら」というこの映画の設定を説明するのに不可欠の場面だったらしい。映像特典のインタビューで2人の監督が語ったことには、ゴッホは天才だが、彼の素行は周囲に理解されない。もしゴッホが探偵なら独特の方法で事件を解決したはず。だから、この映画は「ゴッホがもし、探偵だったら」という設定で作った…と。え、何よくわからんこと言ってんの…?と思わずインタビューも何度か巻き戻して観た。よくそんなこと思いつくね…そんな発想から生まれた物語がきちんと映画の体裁を保っていることに驚く。ジョニー・トーなら魚屋が魚を3枚におろすのを見て着想を得て、人間がもし3枚におろされたら…って物語も映画として整えられそう。まだ観てないだけで、既にもう撮ってたりして。ほんまに何でも撮れるのね…もはやあなたがMAD監督…!
 
 
最後の鏡の場面のもたらす映画的陶酔は、同じく混乱しながらも鏡の部屋に辿り着き映画的陶酔をもたらしたオーソン・ウェルズ「上海から来た女」を思い出した。一度観ただけでは何割も捉えられていないはずなので、次は相関図でも書きながら観ようかな。

2016-03-13

2016/3/13

 
 
この週末、土曜にシネマヴェーラでミュージカル映画(左)、日曜はユーロスペースでファズビンダー(右)。同じ建物に2日連続で通うと映画祭を思い出し、往復めんどくさいし階段の踊り場に布団敷いて寝たいものだわ!と思っちゃう。観たいものたっくさんある中、時間の制約があって気合で選んだので、どちらも観てよかったと思える映画でよかった。そして2週間ほど映画活動は小休止…よよよ…。家に観ていないジョニー・トー、ブレッソンそれぞれ1本づつあるので、隙間に観ようと思う。
 
 
ミュージカル映画特集は、観る機会の少なそうな「舗道の囁き」という戦前の和製ミュージカル、トークショーつきを観たら、素敵!と目が醒めるような俳優に出会えてホクホク。好きな俳優・日本人部門、不動の首位をひた走る川口浩の地位を脅かす存在登場か!浩、まりこに冷たいからな…(おにぎり娘の恨み)。

 

2016-03-12

NODATE PICNIC CLUB / 宇宙SF / 星づく夜

 
 
発行されたら読んでみたいな、と思っていたリトルプレスを京都から購入。昨日ポストに届いてた。購入と詳細はこちら。
 
 
 
オリジナル切手をつくるサービスには興味津々なのだけど、実物を見たのは初めて。大好きな和菓子「水無月」の絵だった。
 
 
 
 
四季折々の和菓子のページが眼福。おはぎ、大福、お団子も好きだけど、造形の美しいこういう和菓子はもっと好きで、WAGASHIという写真集を何度も図書館から借りたり(虎屋の和菓子の掲載が多め)。パステルカラーのお月見団子に驚き…その発想に。茶道、京都というと500年ぐらい修行してから来とくなはれ。と言われそうな気後れ感を生みそうなものを、ポットにお湯、好きなお茶碗持って景色のいいところでレジャーシート広げて野点ピクニック最高!という新しい提案に溢れていて素晴らしい。
 
 
去年あたりから、造形の美しい和菓子をコツコツ買って食べてみるささやかな活動を始め、とりわけ印象深いのは、八坂神社前の亀屋清永。
 
 
 
 
お盆の帰省の際に寄ったので、送り火モチーフの和菓子が京都のあちこちに
 
 
 
しかし私が買ったのはこちら
「星づく夜」の「づく」っていう日本語がいいなぁ、と
 
 
 
サイズは大小あって、小さいほうを
手のひらサイズで2〜3人分かな
 
 
月は羊羹、星は淡雪羹
味はほのかにパッションフルーツ!
とあったのだけど、パッションフルーツ感はたいして感じられなかった…
私の愚鈍な味覚のせいであろうか
 
 
 
しかし造形目当てなので、パッションフルーツ感の希薄さは気にならない。手のひらサイズの宇宙、切って横から見るとすなわち宇宙の断面。ここ数年「ゼロ・グラヴィティ」「インターステラー」最近の「オデッセイ」まで宇宙SFものに心酔している私としては、宇宙が手のひらにッ!→こ、これが宇宙の断面ッ…!→宇宙を食べたわッ…!…小さなツ連発で胸震わせながら堪能。人気のお菓子のようだけど、そんな動機で買ったのは私ぐらいなものだろうか…。夏の宵に外で食べるのも素敵でしょうね。
 
 
ここのところ会って口を開けばトピックが「自衛隊」「ホロコースト」「鉄道」「ペンギンの卵が孵化するまで」など、お互い乙女心を忘れがちにもほどがある友人にプレゼントすべく、NODATE PICNIC CLUBリトルプレスは2冊購入。春めいた和菓子を食べながら一緒に読みたいです。

 

2016-03-11

2016/3/11



震災特番のテレビを観ながら、2日連続の来客。気がつけば、きのこ炊き込みごはんの素と、うどん&めんつゆを物々交換していたから明日はうどんの日。


ドイツのことを日記に書いたと思えば、今日の来客は長らくドイツに暮し通訳をしていた人で、この機会に教えてもらおう。5月、2度目の「ヴィクトリア」(ベルリンが舞台のドイツ映画)を一緒に観に行くことにして、ドイツ語のわからない私と、わかる人ではきっとずいぶん違って観えるのだろう。何かに関心を持つと、渡りに舟のごとく、詳しい人が目の前にやぁやぁと登場して教えてくれる、というのは私の人生の奇跡と思う。Bon week-end!

2016-03-10

2016/3/10

 
 
帰宅後、近所に住む友人が、誕生日の贈り物を届けてくれる。もはやつきあいも長く、贈り物のネタが尽きたから、自分では買わないけど贈られたら嬉しいものを考えてリクエストして。と言われたので、リクエストしたブックカバーはPOSTALCOのもの。ブラックが長く品切れしていたらしく再入荷したらしい3月に受け取る。誕生日は12月。気になっていた商品ということに加えて、私の知る限りで一番の読書家で、それが高じて出版社に勤めている友人から贈ってもらって嬉しい。9月の友人への誕生日の贈り物も理由があって保留にし、この4月に贈る予定だったけど、今日聞いた嬉しい知らせにより、軌道修正をはかることに。
 
 
残り3分の1まで読み進めた「キャロル」にさっそくかけてみる。昨日読んだキャロルの放つこの言葉が突き刺さったのは、テレーズだけではない。
 
 
「あなたが本当に今度の旅を楽しめるのかどうか、わからなくなってきたわ」「鏡に映ったものを見ているほうが、はるかに楽しいんじゃない?あなたはどんなものに対しても自分のとらえ方をあてはめようとする。たとえばあの風車みたいに。あなたにとってはここで見ているのも、実際にオランダに行くのもあまり変わりがないんだわ。そんなあなたが本物の山や、現実の人たちを見ても楽しめるとは思えない」
 
 
「なんでも間接的にしか体験しないで、どうして何かを創造できるというの。」

 

2016-03-09

2016/3/9

 
 
日曜、窓の外はマラソン大会。
 
オスカーに絡むような大作映画の上映時期ばかり気にして、他の映画を見落としてないかしら…と、ふとイメージフォーラムのサイトをチェックしていたら、「ヴィクトリア」のサイトができていることに気づく。5月上映。
 
 
 
ドイツという国には行ったこともないし、縁のないままなだろうと思っていたけど興味が湧いてきている。「ヴィクトリア」」を観るとベルリンでロケ地巡り…ロケ地といっても珍しい場所は何もないクラブやマンションだけど…をしたくなったし、繁忙期でもこれだけは観に行かねばと思ってるファズビンダーもドイツ人。そしてルビッチもベルリン生まれ。
 
 
本郷でカレーを食べた友人は読書好きで1ヶ月ほどをひとつの単位として、その時興味を持った対象を本で追いかけるとのこと。最近の例では自衛隊について読み漁った月が終わり、現在はホロコーストについて読み漁り中なのだという。去年、ランズマンのドキュメンタリー「SHOAH」を観に行ったと伝えたら、行く!教えてくれてありがとう!と、その後観に行ったようで(「SHOAH」は4部構成、朝から上映開始、観終わるととっくに夜という映画。我々は「SHOAH遠足」と名付けた)、私はあれは第4部、カメラが被写体、ホロコーストについて哀しい記憶がある、できるなら二度と思い出したくもない人々を追い詰め始め、耐えきれず泣き出す人もいたことが、いったいどこの誰に彼らを追い詰める権利があるの?と偉そうなカメラに憤りを覚え、経験としては観て良かったけど好きなドキュメンタリーではないと言うと、友人は本をたくさん読み漁っても書かれていなかったこと…収容所に向かう列車に乗せられる人々が、その先の運命を知らず、舞踏会のような楽しい華やかな場所に行くのだ、と騙されて乗せられたという証言を映画で初めて知ったので観て良かった、という意見だったので、なるほど私は映画としてどうか、ドキュメンタリーを撮る姿勢としてどうか、ということが気になっているけど、あれをもっと学術的な?興味の対象として友人は観たのだなと思った。
 
 
ヨーロッパ映画を観る時に宗教とホロコーストの知識は避けて通れないという話にもなり、私はドイツからアメリカに渡った監督たち(ルビッチやビリー・ワイルダー)が、いかにもヨーロッパ的な成熟をアメリカ映画にもたらしたような気がしていて(例えばルビッチ映画で夫のいる身である女が他の男との間をふらふらしたり、セックスを暗喩する表現が随所にあることなど)、その点からドイツの歴史にも興味はある、と初めて口にしてみたので、なるほど自分はそこに興味があるのだな、と気づく。
 
 
何年前の映画だったか、ドイツに漠然と興味を持ち始めるきっかけが、偶然ギンレイホールに流れたのを観た「東ベルリンから来た女」だったので、あの映画の背景に描かれたものを理解した上で再見してみたい。映画を1本観るたびに、知らないことばかりだな、と静かな気持ちになる。
 
 
「ヴィクトリア」のメモだけするつもりだったのに、長々と書いてしまった…。春みたいだった昨日から一転し、東京は肌寒い。雨も降ってる。

 

2016-03-08

続・死に体のiPhoneのメモから



何を・いつまでに・テキパキと!など、やることが山積みになってきて、映画館には週末しか行けない、ぼんやり妄想する隙間時間も不足気味の時期到来。あと1ヶ月続くのか…(遠い目)。場所も問わず、お金もかからない妄想っていい趣味だな。妄想の定番テーマは「朝起きてから眠るまで・川口浩の1日」など。浩映画を熱心に観るのは妄想の種を仕入れてるだけに過ぎない。


iPhoneメモ、濱口監督のものは昨日書いたからiPhoneから削除。もうひとつ、侯孝賢トークのメモについて。


私は侯孝賢の良い観客ではなく、観ると必ず眠ってしまう。フィルメックスでは「戯夢人生」を観て、案の定眠ってしまった。男女が煙草を顔を近づけて渡す場面だけは記憶が濃い。何度か「戯夢人生」を観て、いつも寝て、いつもあの場面だけ覚えてるので、あの場面と私は縁があるね、と思う。


上映後の質疑応答について、他の質問は特に覚えておらず、そのうちフィルメックス公式か誰か親切な人がまとめてくれるだろう…と、眠気を覚ましながら聞いていたのだけど、ちょうど原節子さんが亡くなったニュースのあった頃で、原節子さんについて、あるいは俳優・女優について監督が思うところをお聞かせください、という質問はタイムリーで東京の観客らしい質問でとても良かった。侯孝賢もいいね!と思ったのか、満面の笑みかつ親指を立ててグッジョブ!ポーズを見せたので、フィルメックス豪華!侯孝賢の生グッジョブ、至近距離でいただきました。と、眠気もついに覚めた。


監督の答えは「原節子さんは小津以外の監督の映画にも出ているけど、とりわけ小津さんと長く仕事したのは監督にとって良い俳優だった、ということだと思う。良い俳優は得難いから常に一緒に仕事をしたいもの。自分も何度も同じ俳優と組んでいる。台湾は小さな国だから、アメリカのように俳優がたくさんいるわけではないし、キャスティング制度が整っているわけでもない。成瀬にとっての高峰秀子のように、俳優、出演者がいるから撮りたいものが見つかる。監督とは、そのようなものです」と、iPhoneにメモしていたので、ここにメモし直し、iPhoneから削除。


雑誌の小津特集で、岡田茉莉子が小津監督に「私は監督にとって何番バッター?」と質問すると「岡田くんは、一番バッターだね」と答え、「じゃあ四番はどなたですか?」とさらに尋ねたら「それは、杉村春子くんだよ」と答えたと語っているページがあり、原節子は四番じゃないのか!と驚いたことも、あわせてメモしておきたい。

2016-03-07

死に体のiPhoneのメモから

 
 
年明けに予約していたものを3月に受け取る。自分のための買い物でも、箱に入れてリボンをかけてくれるお店、嬉しい。実物を見ずに予約したのでドキドキしたけど、開けてみると実物はさらにドキドキする儚い美しさで高揚した。
 
 
現在使ってるiPhone5がもはや死に体、今月発表される新作がサイズも小さいらしいので手に入れようと思ってる。契約するのにいちいち2年縛られることをこれ以上考えたくないのでSIMフリー化も検討。とても手が小さいので小さくて機能性の高いものが好きなのだけど、財布にしろカメラにしろ、大きなサイズのものをホールドできない、握力も足りず持てない、長財布など持つ能力がないと言うと、なかなか信じてもらないけど事実。左利きでもあるので道具類を選ぶのはいちいち吟味が必要になる。だいたいの道具は私より手の大きい右利きの人用にできてると思う。
 
 
話がそれまして。映画祭や監督トークで紙とペンを持っておらず、死に体のiPhone5のメモに記録した言葉がいくつかあったので整理がてらメモ。
 
 
「ハッピーアワー」の東京初日、半日かけて1本の映画を観て、下北沢のB&Bに移動して濱口監督のトークを聴き、トーク自体はあまり面白くなく、B&Bの雰囲気も苦手でどっと疲れ、辛辣だけどトークって話し手より聞き手の人選が何より大事なのだなぁ。自分自身に置き換えても同じで、会話が思うように弾まない時って相手のせいにするのは簡単で、案外こちらの問題ということは多いね、と自戒も込めてそう思った。しかし監督の言葉は時折ハッとするものがあった。
 
 
「ハッピーアワー」以前の映画、ドキュメンタリー?を撮っている時、被写体の人の言葉、「恥とは自分を吟味する者だけが持つ本能」という言葉が印象に残っているそうで、「恥を捨てて演技されると、違う。自分自身が何者かということを演じる側、演じさせる側が吟味しあう。カメラの前に立つことも吟味で、それはあらゆる人に見られるということ。これが自分自身であるということなしにカメラの前に立てない」とのこと。「ハッピーアワー」はプロの俳優ではない、演技ワークショップに集まった普通の人々が演技をする映画だったからか、演出する人にも俳優たちの覚悟にも興味を持ったばかりだったので、これは…!とiPhoneにメモ。演技、映画のカメラの前に立つこと以外の何にでも応用して考えられること。
 
 
それから濱口監督の映画は乗り物、ロープウェーや電車、自動車が頻繁に登場することについては、映画は「活動写真」なのでスクリーンに動くものが映っていることで映画らしさが出てくる。低予算の映画の場合、人を固定してカメラを動かす、ということは予算上難しいので、公共の乗り物で撮影して、窓の外の景色がどんどん動いていく、という場面を撮っている、という話も面白くてメモ。なんだか映画誕生期の観客のような、人間の本能に訴えられるような話。
 
 
乗り物といえば「ハッピーアワー」の私的クライマックスは物語が大きく動く第3部ではなく、第2部の終わり、フェリーに乗る純さんに、青年が「ありがとう」と手を振る場面だった。港を離れて出発していくフェリー、手を振ること、動くものがスクリーンに同時にいくつもあったから心も動いたのかな。
 
 
濱口監督トーク以外に、フィルメックスでの侯孝賢トークのメモも入ってて、iPhoneのメモ、豪華だわ。死に体だけど。

 

2016-03-06

2016/3/6

 
 
2日続けてTOHOシネマズへ。今日は六本木。タランティーノ新作を観る。昨夜、ちらっとジョニー・トー「MAD探偵」(この邦題の適当さ!)を触りだけ観て寝落ちしたのだけど、眠る前に観たイメージが男が自分の耳を自分で切り落とす…眠かったので筋書きが曖昧だけど、あの男が探偵?…なるほどMADだね!とムニャムニャ思いながら眠ったけど、変に夢に反映されずに安眠できて良かった。そのうち最後まで観るはず。
 
 
そして今日のタランティーノ。昨夜から、血、刃物、銃しか観ていないように思う…。しかしジョニー・トー映画の銃撃戦は銃弾の量が雨あられ並みに降り注ぎ、そんなに撃ってるのになかなか当たらないね!と思っていたけど、それに比べてタランティーノ、弾数はもったいぶった少なさで、しかし少ない量でどんどん敵を仕留めていく効率の良さ。肝心な場面で弾切れした場面で、ジョニー・トーならあと10倍撃っても弾切れしないよ、銃の種類の違いかしらね、と思いながら観た。一発の重み、洋の東西の違いか、監督の表現の違いか。いくらメロドラマに興味がないからといって、最近あまりにこんな映画ばかり観ておりバランスが悪い。でも手元にあるDVDは、ジョニー・トー2本、ブレッソン1本、デヴィッド・フィンチャー1本、サム・メンデス1本。全部観終わったら、歯の浮くようなセリフのラブストーリーなど観ようかな…。

2016-03-05

本郷から日比谷

 
 
徒歩3分のところに住んでる友達が朝から訪ねて来て、本郷まで散歩。万定フルーツパーラーでカレーを食べる約束をしばらく前からしていた。前に来た時はレモンスカッシュだけ飲んでカレーは食べず。レモンスカッシュはちゃんとレモンの酸っぱい味がして、さすがフルーツパーラー!と思った。あちこち古いね…と思えば大正3年創業で、この建物は昭和3年に建てられたそう。昭和3年…1928年…それって…(検索)…自分のほうに思いきり引き寄せてみて映画史ならグレタ・ガルボやバスター・キートンが活躍してた時代、去年観たジョン・フォードのサイレント「血涙の志士」は29年の映画だった。古いはずだね…。
 
 
 
 
食事はカレー、ハヤシライス、カレースパゲティ、ハヤシスパゲティ。
 
 
 
 
窓辺の席、ガラスに鳥が。
 
 
 
 
私はカレー、友達はハヤシライス。
少し焦げたような味がして、しかしハプニングではなくいつもこの味らしい。
何をどうしてあの焦げた味を作ってるのだろうか…わざとちょっと焦がして…?
 
 
 
カレー、生搾りジュース以外にも名物があって、このレジスター。昭和9年からずっと現役だそうで、当時は家が一軒買えるほどの値段だったとか。昭和9年…1934年…(検索)…小津監督の「浮草物語」、フランスからは「アタラント号」、アステア様は「コンチネンタル」を踊り…!なんて長きに渡っての働き者なの。
 
 
Nationalのロゴがあったので、松下電器製かと思えば違って、ナショナル キャシ レヂスター会社とあり、現在も存在するNational cash register(NCR)社の舶来品。その下に「北米合衆国 オハヨー州 デートン」と書いてあって、オハヨー?あ、オハイオ!日本の貨幣に対応するようにYEN SEN(円、銭)の文字あり。カレー代750円払ったら、がしゃがしゃがしゃーンの音の後に「現金」「75SEN」と表示された。
 
 
文化遺産級の店だった。春には苺ジュースがあるようだし、散歩がてら飲みに再訪したい。その後、東大構内を抜け、根津から千代田線に乗って日比谷まで。
 
 
 
 
名画座の番組も魅力的だったのだけど、2本立てを観ると家事・休息の時間が圧迫され繁忙期前にのんびりした時間がないと辛い…ま、映画ものんびり観てるのだけど、それでもね…と、スカッと1本、新作を観ることに。スカラ座で「オデッセイ」を。3D眼鏡かけて宇宙もの観ていると、数駅しか離れてないのにカレーから一気に何世紀も進んだ錯覚。

 

2016-03-04

PTU

 
 
銃撃戦の火花で暖をとる冬の終わり。ジョニー・トー祭「PTU」。2003年の映画。
 
 
「エレクション」シリーズが黒社会ものと言えど銃が登場せず、鉈や石や包丁での暴力描写だったので、「PTU」の最後で銃声が響き、ノワールもの鑑賞気分が盛り上がる。とはいえ「PTU」も前半は、包丁が身体に刺さったまま車を運転するチンピラなど登場し、痛い痛い痛い痛い!と声をあげてしまう。銃だと一瞬だけど、包丁は長引くね…映画的には見せ場の時間をのばせて便利なのかも。
 
 
夜の始めにバナナの皮で滑った拍子に銃を失くした刑事(ラム・シュー)が夜の終わりに再びバナナの皮で滑るまでの物語。今時バナナの皮で滑って映画になるのはラム・シューの視覚的魅力によるところが大きい。銃を失くす筋書きは黒澤明「野良犬」へのオマージュらしく、ジョニー・トーは黒澤明が大好きなんだなぁ。私は黒澤明よりジョニー・トーが好きよ。
 
 
火鍋屋の座席で登場人物の力関係を見事に説明する前半から、一転して中盤はテンポが緩く中弛みのように思えたけど、「エレクション」シリーズでは始終緊張して物語を追っていたので、中弛みのせいで却ってジョニー・トーの撮る香港を隅々まで観察することができた。夜の場面がことごとく素晴らしい。香港の夜に見惚れて撮っている。かっこいい!と心が高揚するままに、これでもかとかっこつけて撮っていて気持ちいい。深夜の広東道で物語が収束する場面はひたすら映像に見惚れてた。深夜といえども広東道、あんな無人の国のような場所でもあるまい、と思っていたら別の場所で撮ったそうだけど。
 
 
その後観たジョニー・トー映画ははマカオ、大陸、昼の香港で撮られているものだったから、「PTU」は香港の夜が美しく撮られた小品として記憶に残っている。
 
 
昨日、ルイス・クーの中国名は古天楽であってるんだっけ?と調べるべく検索、中国版wikipediaのような百度百科が情報豊富で楽しい。
 
 
ジョニー・トー、フィルメックスで観た「華麗上班族」の後にもう新作を撮ってる。「三人行」、主役はヴィッキー・チャオ。ルイス・クーも出てる。公開希望!多作な人ね。
 
 
多作…と思えば1本撮るのに何年もかけてたりもして。「PTU」は愛すべき小品という印象なので肩慣らしのようにさっと撮ったかと思えば、撮影に2年もかかったらしい。どのへんに…?やっぱ包丁刺さったまま運転するあのシーンとか…?そしてこの映画が台湾や香港の映画賞を総なめ的に受賞したという事実も、なんだか意外だった。
 

 

2016-03-03

Election 2 以和為貴

 
 

銃撃戦の火花で暖をとる冬の終わり。家でコツコツ開催していたジョニー・トー映画祭のメモ。

 

エレクションの後篇、「エレクション 死の報復」を観る。原題「Election2 以和為貴」で、こちらのほうがいい。「和をもって貴しとなす」という副題が似合う物語だから。

 

前篇は黒社会で最大勢力を誇る一大組織の内情を描くクラシックな香港ノワール。2年ごとにあるトップ選挙、儀式、掟。カメラは香港の外に出ず、縄張りを暴力で支配して高いところから眺める尖沙咀の夜ほんま最高や!と狭い香港の内側の話だけど、後篇は返還後、中国との関わりの中で香港黒社会に射し込む変化の兆しを描いている。2006年の映画。

 

暮らしていた時間のせいか、北京(ひいては中央政府)のほうが体感的に身近で、だから香港や台湾の人々と話していて「大陸は嫌い」と言われるたびに少し傷つく私でも、返還式典をニュースで観て、香港の街並みに人民解放軍の車が入ってきた時は軽くショックを受けた。初めて香港に行ったのは返還前、まだ飛行機は高層アパートに住む人々が干した洗濯物に触れられるような距離を旋廻し、啓徳空港に着陸していた。その次に行ったのは2000年、旅行者の私は大きな変化は感じなかったけど、出かけたり食事したりした香港人は、変わってしまった、もはや返還前の香港ではない、と皆、寂しそうに口にした。

 

前篇から2年経ち、再びトップ選挙の年。2年の間に香港黒社会を取り巻く環境も激変しており、もはや内部で覇権を争うだけでは生き残れない。堅気になって大陸で商売を広げたい古天楽(ルイス・クー) は選挙に興味を示していなかったものの、中国公安との取引によりトップを目指すことになる。ああ面白い!黒社会を手懐け協調路線を築きたい中国公安の腹黒さよ。もはや敵は黒社会の中におらず外にいた。

 

 

古天楽(ルイス・クーと日本では表記されているけど、この中国名の漢字の並びや響きがとてもいい)、前篇では黒社会稼業の隙間に大学で経済学の授業を聴講している場面があった。後篇では大陸ビジネスに普通話を覚えるのは必須という心構えなのか、妻と食事するレストランでメニューを見ながら、漢字で書かれた料理名を普通話で読もうとトライするのだが香港人には馴染みのない音も多いのか、ウェイターにクスクス笑われながら訂正されるという場面があった。勉強熱心で真面目、そして本気で堅気になりたいのだなぁ、という解る場面でもあるし、今後は大陸の言葉を習得しないと商売にならない切実さも感じる。

 

 

返還後に行った香港でぶらぶら中華系デパートを歩いていたら、踊り場に普通話教材を紹介するブースがあって、香港の人はどうやって勉強するのだろう…と近づいて眺めていたら、売場の女性に話しかけられた。普通語の学習に興味ありますか?もう生活には困らないぐらいは話せるんです。え?どうやって勉強したの?北京で。え?あなたどこの方?日本人です。という不思議なやりとりをした記憶。遊んでいた香港人の友達は、官庁の高い役職に就く人は職業上の要請である程度は話せたし、若い女友達は学校で覚えたけど香港ではそれまで話す機会がなく、私と普通話で電話で話してる後ろでお姉ちゃんが「あなた何、普通話話してるの!面白い!」と茶々を入れる、という塩梅だった。あれは2000年頃で、それから数年経ったこの映画ではもはやビジネスでは必須という感じだったのだなぁ、と一生懸命な古天楽を観て思った。

 

 

トップ選挙は前篇に引き続き票獲得のため凄惨な手段も用い、しばらくミンチ肉が食べられるなくなると忠告された場面は、意外と大丈夫だったけど、ミンチにする前の場面で包丁を持つ古天楽の手つきが完全に肉屋のそれだったことと、犬にミンチ肉を食わせる檻の間の通路に古天楽の影が長く伸びる俯瞰のショットがキメキメに格好良く見惚れた。

 

 

しっかり黒社会もの、香港ノワール王道の艶やかさも保ちながら、政治も経済も変化の渦中にある街を、センチメンタルに過ぎない視点から描くジョニー・トーのような映画監督がいる香港が羨ましい。

 

2016-03-02

2016/3/2

 
 
もう3割ほど春のような気がして薄着でいたせいか、体調の悪そうな人と長い打ち合わせをしたせいか、背中のあたりがぞぞぞっと寒い。まだ冬ですか。天気予報によると明日から気温が上がるようなのだけど。
 
 
日本ではロードショー公開されなかったけど、大阪アジアン映画祭では上映されたというアジア映画はたくさんあるようで(東京ではフィルメックスかな)、一度行ってみたいと思っており、東京国際映画祭で観られなかったタイの大好きな監督の新作が2本もかかるようで、大阪遠征を考えたのだけど、繁忙期前の強行は体力的に危険という真面目な判断により見送り。ちぇっ…大人ってつまんない…。年末年始も東京だったから、そろそろ関西が恋しい。
 
The master は「あの店長」という邦題になったようで
 
同じ監督の「フリーランス」はコンペに
 
 
あらすじだけ読むと、どこがそんなに面白そうなの…?という感じなのだけど、過去2本この監督の映画を観ており、きっと面白くて新しいものが観られるのだろうな、と絶大な信頼を寄せている。あらすじの短い文章で零れ落ちるものの多さよ。せっかく日本語字幕がついたのだから、東京で過去のものもあわせてひっそり特集上映してくれないかしら。そして背中の寒気が増す前に暖かくして眠らなければ。